PRP(多血小板血漿)治療
PRP療法をご存じでしょうか?
Plate Rich Plasma療法:多血小板血漿療法は再生医療の分野で話題となることが多く、聞いたことのある方も多いと思います。有名な話ではプロ野球の選手が肘の靱帯再建手術の代わりにPRP療法を行ったことなどが報道されています。血小板には各種の増殖因子とよばれる物質が含まれており、これが組織再生に大きな働きをすることが近年明らかとなってきました。PRP療法とは自分の血液中の血小板を分離、濃縮し傷ついた組織に戻し、その再生能力を利用し組織修復を促す治療といえます。自分の血液をもとにした成分であるため感染(輸血後肝炎、HIVなど)やアレルギー(DVHD)の問題がなく近未来における再生医療の柱となる治療法として期待されている治療といえます。
現実の医療の分野では形成外科や歯科領域ですでに多くの実績をつんでいます。整形外科領域では先にのべた腱の再生、関節軟骨の再生に用いられ始めたところです。問題はPRP抽出過程における安全性があります。PRPの抽出濃縮は遠心分離機を用いますが、抽出過程では無菌的操作が必要となります。特に関節内に投与する場合には万が一にも雑菌の混入は感染性関節炎を誘発する可能性があり再生医療法で法的に厳しく規制されています。もう一つの大きな問題は健康保険が使えないことです。すなわち自費の診療となります。従来の方法では大変高額(25万円から30万円以上)な医療となり安易に患者さまにすすめることができないことが導入の障壁となっていました。当院では可能な限り安価で、しかも安全性が高い方法を模索してきました。この度、複数の方法を組み合わせることで安全性の担保と価格を抑えることが可能となりました。
採取した血液を外部委託し抽出濃縮しフリーズドライしたものを投与するPRP-FD療法を先行して行うことにしました。まだ一般の治療と比較すると十分な高額での治療ですが従来の方法よりも安価で提供します。膝関節などの大きな関節への投与は手技的には容易ですが、腱など軟部組織への投与はエコー下で正確な位置に注入することが必要となります。当院では整形外科治療に特化したエコー装置を導入しており、腱内投与にも対応可能であります。まだまだ、効果の保証できる治療方法とは言えませんが、従来の治療で症状緩和の難しい患者様や早期運動復帰を望む患者様には選択する価値のある治療方法の一つであると考えます。関節内投与可能なPRP-FD治療は膝関節のみではなく、従来治療方法のないと言われているヘバーデン結節などの指関節の関節症の治療として効果が期待できます。岩見沢本院ではすでに20例以上のヘバーデン結節に応用しています。変形がもとの形に戻ることはありませんが、腫脹の軽減や難治性粘液嚢腫が治癒したり効果が十分に表れています。またPRP治療は筋腱の損傷のみならず、皮膚の醜状(瘢痕、シミ、しわ)の治療法としても期待できる治療方法です。腱内投与のみ可能な安価なPRP-ACP治療の認可にはまだ時間がかかるためにPRP-FD治療のみを先行して実施すことにしました。投与部位にかかわらずPRP-FD採取には一定の金額(15万円税別)と作成までに3週間の時間がかかります。関節の大きさや投与関節の数により投与方法は変わります。PRP-FD治療の可能な施設は道内でもまだ多くありませんが、治療方法選択の一つとして、また治療方法のない関節症の治療として、早期運動復帰の一助として活用していきたいと思います。詳しいことはお問い合わせください。 合田猛俊