培養幹細胞上清液(じょうせいえき)治療

再生医療の分野で最近注目を集めている培養幹細胞上清液治療をご存じでしょうか?

IPS細胞の発見以来、再生医療の分野では幹細胞を用いた治療に注目が集まっています。幹細胞はいろいろな細胞に分化する能力のある細胞で、自分自身の幹細胞を骨髄、脂肪などから採取し、その幹細胞を培養し増やしたものを自分自身に投与することが培養幹細胞治療です。幹細胞にはホーミング能(幹部に集まる習性)があり、静脈投与で患部の修復、再生をおこなうことが幹細胞治療です。このように幹細胞治療は多くの利点がありますが、細胞採取に手術が必要なことや費用など(多くは1回100万円程度)に解決すべき問題があります。

 

培養幹細胞上清液とは

幹細胞を培養するときの培地にある上澄み液のことです。幹細胞を培養して増やしているときに幹細胞から各種のサイトカイン(増殖因子)とエクソソームが大量に分泌されます。上清液はその上澄み液から不純物を取り除いたものです。サイトカインは幹細胞が作り出すたんぱく質で炎症を抑える効果や傷ついた組織を修復する機能があります。エクソソームはより小さなたんぱく質で細胞間の情報を伝達する機能を有しています。

 当院ではPRP(多血小板血漿治療)とPRP-FD治療を北海道ではごく早期から実践し多くの治療に活かして良好な成績を収めてきました。PRPは自分の血小板自体の組織修復力と血小板中に含まれるサイトカインを利用し炎症を治め、組織の修復を促すものです。当院では特に手指のヘバーデン結節の治療において良好な成績を得ています。

上清液中にはPRPの数十倍から数百倍のサイトカインとエクソソームが含まれており、PRPよりも大きな効果が期待できます。しかし、整形外科では主に関節内に投与を行うため、感染のリスクが導入の足かせとなっていました。今回、そのようなリスクが解決した大学病院の関連施設で生成した上清液を確保できることになりました。しばらくは、従来のPRP治療、ACP治療と併用して上清液治療を行っていきたいと思います。

 全国的にも上清液治療を行っている整形外科はほとんどありません。岩見沢ごうだ整形外科と札幌北7条ごうだ整形外科で上清液を利用した再生医療を開始致します。

 

 上清液中に大量に含まれるサイトカインには抗炎症効果と組織修復効果があります。エクソソームには情報伝達だけではなく細胞の賦活効果があると報告されています。整形外科では主に関節、靱帯に用いられますが、上記の効果は全身に期待できます。点滴で投与することにより全身に効果が期待でき更年期障害の改善や全身炎症性疾患(アトピー皮膚炎、リウマチ)の症状軽減、アンチエイジングの効果が期待できます。また、局所に直接注入することによりその部位の修復が期待できます。例えば関節変形や腱靱帯の損傷、毛髪の再生などに応用可能です。

また、鼻から吸入することにより脳や脊髄への効果(脳梗塞後や脊髄の症状)が期待できます。

 

上清液の応用

上清液はそこに含まれる豊富なサイトカインにより多岐の効果が期待できます。

  • 変形性関節症に対する治療(膝、股関節、足関節、手指、肩など)
  • アンチエイジング治療(サイトカイン、エクソソームによる細胞の若返り効果
  • 更年期障害の改善
  • 薄毛の治療
  • 神経麻痺の改善
  • アトピー性皮膚炎の改善など多くの効用が期待できます。

 

当院で使用する上清液について

最近はネットやインスタなどで安価な上清液が販売されています。上清液は輸血ではありませんが、人由来の細胞を培養したときに作られるものであり厳重な管理が必要です。幹細胞の出自、感染管理、不純物除去だけではなく品質の均一化も重要です。当院では使用用途に応じて数種類のメーカーの上清液を用意しています。関節内に投与するものは値段が高くなりますが特に感染に対して安全性の担保されているものを使用します。更年期障害やアンチエイジングに使用するものは使用回数が多くなるため単価をできるだけ抑えて、かつ安全性の担保されたものを使用します。

関節内注射は1回5万円(税別)

点滴注射は1回1万円(税別)

点鼻治療は1か月で1万円(税別)

頭髪注射は面積によりますが1A5万円(税別)

 

 

変形性膝関節症には月1回から2回の上清液治療を数回行うことを推奨しています。上清液治療と並行して運動療法で筋力改善と軟骨に圧力をかけることによる再生を促します。関節の再生医療では上清液の投与だけではなく運動を併用することにより効果が増強されます。関節痛は体重に影響されることが多く場合によってはGPLA-1を併用したMedical Dietをおこなうこともあります。

その他の変形性関節症も症状に応じた治療を計画します。

ヘバーデン結節の治療

当院ではヘバーデン結節やブシャール結節に対してPRP-FD治療を行って良好な成績をあげてきました。しかし変形の進行した患者様では疼痛の残存する指がでてくることも経験しています。従来は再度PRP治療を行うことを選択したり、手術を選択することになっていました。しかし、今後は症状残存した指に対してsecond lineの治療として上清液を利用します。

PRP治療と上清液治療の違い

PRP治療と上清液治療の違いは、PRPは自分の血液で作り、上清液はドナーの幹細胞を培養したものから作ることです。一種の血液製剤やプラセンタ注射と同じ扱いとなります。肝炎やAIDSなどの感染症は完全に除外されていますが、未知のウイルスや検知方法のないウイルス感染が除外できないため上清液治療を受けた方は献血ができなくなります。(これまでに上清液治療で何らかの感染症に罹患した例はありません。)

また、上清液は厚生省が認可した薬剤ではないため雑品扱いとなり医薬品副作用被害救済制度の適応外となります。

 

当面の間、上清液治療を希望の方は月、木の合田医師の外来で詳細を確認した後接種を行います。

まずは先行して関節投与を開始します。全身点滴と経鼻投与は在庫数が限られている為診察時に確認下さい。頭髪への応用は現在スタッフで効果の確認を行っています。結果は当ページやインスタグラムで公表予定です。早期に希望の方は個別にご相談下さい。