プラセンタ注射について

 整形外科外来には、いろいろな症状の患者様が来院しますが、今回は更年期の女性の症状について解説したいと思います。更年期は閉経の前後5年間と定義されています。閉経の年齢は人により違いますが、おおむね40歳代から60歳までと考えていいと思います。卵巣機能の低下により女性ホルモン(エストロゲン)の産生が低下し、逆に卵巣機能を刺激するホルモンが増加します。整形外科では閉経後骨密度低下による骨粗鬆症が問題となることがあります。その他には更年期には多彩な症状があらわれます。全身の熱感やだるさ、節々の痛み、肩こり、指のこわばりなどで、整形外科を受診しても、特に問題ないと言われてしまいます。そのため数年にわたり症状が持続し、気分が落ち込んだりします。気分が落ち込むとさらに悪い負のサイクルにはまり込んでしまうこともあります。

 治療には女性ホルモンの補充や漢方薬、プラセンタ注射などが行われます。当院では漢方薬の治療やイソフラボンのサプリメントとあわせてプラセンタ注射を行っています。

プラセンタ注射(メルスモン注射液)は昭和31年に承認された医薬品です。国内の安全なヒト胎盤を原料としています。胎盤には各種アミノ酸や増殖因子が多く含まれており、更年期の多彩な症状の緩和に効果が期待できます。肝炎などのウイルスは完全に除去されており本剤使用後の感染は報告されていません。クロイツフェルトヤコブ病(狂牛病)についても発生の報告はありませんが、メルスモンを含む人胎盤由来製剤をを使用した場合には献血はできない決まりとなっています。

 メルスモン注射を行う際にはまず女性ホルモンの検査を行います。更年期障害にあたる患者さまには健康保険で治療を行うことができます。更年期以外の患者さまにも効果が期待できますが、その際は自費の治療となります。

 注射を始めると、初めに感じられることは肌の状態の改善です。お化粧ののりが良くなると気分も明るい方向に向かうようです。女性ホルモンの低下で狂った歯車を明るい方向に向けることにより、肩こりや全身倦怠感が改善し、表情も明るくなる方が多いようです。

健康保険では初診時には採血などがありますが、以後は数百円の治療費となります。興味のある方はお試し下さい。 合田猛俊