L-013 整形外科医は腰痛をどう診断する?

問診・歩き方・触診・神経診察・レントゲン・MRIまで【後編】

監修/合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

前編では、患者さんが診察室へ入ってくるときの歩き方や姿勢、座り方、腰の動き、触診、SLR、筋力・感覚・腱反射などから、腰痛の原因を絞り込んでいく流れを解説しました。

後編では、その診察所見とレントゲン・MRIをどのように照らし合わせ、最終的に「どこが、なぜ今の症状を起こしているのか」を考えていくのかを説明します。

ごうだ整形外科が特に大切にしているのは、画像の見た目だけで痛みを判断しないことです。画像と症状が一致しない場合にも、患者さんが実際に困っている症状を軽視せず、その原因をさらに探し、治療につなげます。

10.ごうだ整形外科では、多くの患者さんが診察前にレントゲンを撮影します

ごうだ整形外科では、まず看護師が問診を行い、痛みの場所や症状、発症の経過などを確認します。

その問診内容をもとに撮影部位をある程度判断し、腰痛で受診された患者さんのほとんどは、医師の診察に入る前にレントゲン撮影を行います。

このような流れにしている理由の一つは、患者さんが診察室とレントゲン室を何度も行き来する負担を減らすためです。

また、当院では看護師やレントゲン技師も、患者さんの症状からある程度病態を考えながら診療に関わることを大切にしています。看護師やレントゲン技師が病態を理解したうえで診療に参加できるよう、スタッフ教育も行っています。

そのため、医師が診察を開始する時点では、すでに電子カルテ上に患者さんのレントゲン画像が準備されていることがほとんどです。

ただし、レントゲン画像が先に準備されていても、医師が画像を先に見て病名を決めてから患者さんを診察するわけではありません。

医師が最初に確認するのは、あくまで問診と患者さん自身です。歩き方、姿勢、座り方、身体の動き、圧痛、神経所見などを診察したうえで、その後にレントゲン画像を確認します。

11.まず患者さんを診て、その後にレントゲンを見ます

レントゲンが診察前に撮影されていても、医師はまず問診と身体診察を行います。

  • 診察室へ入ってくるときの歩き方・姿勢
  • 椅子への座り方
  • 前屈・後屈などの動作
  • 腰や殿部の圧痛
  • SLR
  • 筋力・感覚・腱反射などの神経所見

これらを確認し、「どこに原因がありそうか」を考えたうえで、患者さんと一緒にレントゲン画像を見ます。

そこで、診察で予想した病態とレントゲン所見が一致しているかを確認します。また、診察だけでは分からなかった変化が画像に写っていないかも確認します。

身体を診た結果と画像を照らし合わせることが、腰痛の診断では重要です。

12.MRIはどのようなときに必要になる?

腰痛だからといって、すべての患者さんに急いでMRIを行うわけではありません。診察所見や症状、レントゲン所見をもとに必要性を判断します。

麻痺が疑われる場合

明らかな筋力低下など、神経麻痺が疑われる場合にはMRIが必要になります。どこで神経が圧迫されているのかを確認する必要があるためです。

ただし、特に高齢の患者さんでは、指示された動きをうまくできないために力が入らないように見えることがあります。単にうまく力を入れられない状態を麻痺と間違えないよう、筋力だけではなく感覚や腱反射なども含めて判断します。

圧迫骨折が疑われる場合

診察所見から圧迫骨折が疑われても、発症直後にはレントゲンで椎体のつぶれがはっきり分からないことがあります。そのような場合には、MRIで骨折の有無を確認します。

椎間板ヘルニアが疑われる場合

椎間板ヘルニアでは、麻痺があれば障害されている神経や病変部位をある程度推測できることがあります。しかし、麻痺がない場合には、症状だけでヘルニアの位置を断定できないことがあります。

また、当院を受診される椎間板ヘルニアの患者さんには、非常に強い痛みがある方も少なくありません。神経ブロックを行う場合には、MRIで「どこに椎間板ヘルニアがあり、どの神経が圧迫されているのか」を確認し、治療する場所を決めます。

脊柱管狭窄症が疑われる場合

脊柱管狭窄症が疑われても、全員に急いでMRIを行うわけではありません。ただし、麻痺が強い場合などにはMRIを行います。

また、「今、自分の腰がどういう状態なのかをしっかり知りたい」と希望される患者さんもいます。緊急性が高くなくても、患者さんの希望を考慮してMRIを行うことがあります。

痛みが強すぎて十分な診察ができない場合

強い腰痛でほとんど身体を動かせず、触診や筋力検査などの身体所見を十分に取れないことがあります。

そのような場合には、先にMRIを撮影し、画像から病態を確認しながら原因を考えていくこともあります。

重大な病気を除外する必要がある場合

レントゲンでも診察でも原因がはっきりしない腰痛は少なくありません。その場合でも、骨折、腫瘍、感染症、強い神経圧迫など、見逃してはいけない病気が隠れていないかを確認する目的でMRIが有用なことがあります。

MRIを検討する主な場面

状態

MRIで確認したいこと

麻痺が疑われる

神経がどこで圧迫されているか

圧迫骨折が疑われる

レントゲンで分かりにくい骨折の有無

強い椎間板ヘルニア症状

ヘルニアの位置と神経圧迫

脊柱管狭窄症で麻痺が強い

狭窄部位と神経への影響

痛みが強く診察困難

画像から病態を確認する

原因がはっきりしない

重大疾患が隠れていないか確認する

13.画像の「見た目」と痛みの強さは必ずしも一致しません

腰痛診療で非常に重要なのは、レントゲンやMRIの見た目と、患者さんが感じている症状の強さが必ずしも一致しないということです。

例えば、レントゲンで腰椎の変形が非常に強くても、ほとんど痛みを感じていない方がいます。

MRIでも、大きな椎間板ヘルニアが神経のすぐ近くにあっても痛みがないことがあります。反対に、画像上ではそれほど大きな圧迫に見えなくても、非常に強い痛みが出ることがあります。

画像と症状が完全に一致すれば診断は分かりやすくなりますが、実際には一致しない患者さんも少なくありません。

そのため当院では、画像に大きな異常がないからといって「何でもない」とは考えません。最も重要なのは、患者さんが実際にどのくらい痛みを感じ、日常生活にどのくらい支障が出ているかです。

画像を治療するのではなく、患者さんの症状を治療することが大切です。

14.画像と症状が一致しないときは、さらに原因を探します

診察では特定の神経領域の障害が強く疑われているのに、MRIで典型的な神経圧迫が見つからないことがあります。

そのような場合にも、「MRIに何もない」で終わるのではなく、見落としがないかを改めて確認します。

  • 脊柱管の中だけでなく、椎間孔に狭窄や病変がないか
  • 椎間孔を出た外側に外側型椎間板ヘルニアなどがないか
  • 背骨から出た後の神経周囲に原因がないか
  • 神経そのものに病気がないか

症状がある場所を手がかりに、画像を見る範囲を広げながら原因を探します。

MRIを見ること自体が目的ではなく、患者さんの症状を説明できる病態がどこにあるのかを考えることが重要です。

15.画像で原因が分からなくても「何でもありません」とは言いません

詳しく検査をしても、腰痛の原因を一つに特定できないことがあります。

患者さんの中には、「がんではないだろうか」「このまま歩けなくなるのではないだろうか」と強い不安を抱えて受診される方もいます。

原因を一つに特定できなくても、画像によって重大な病態が確認されないこと自体が大切な情報になることがあります。

「少なくとも今回の画像では、現在心配されているような悪い病変や、この先手足が動かなくなるような病態は確認されていません」

というように、重大な病気が確認されなかったことを患者さんに説明します。

これは「痛みの原因が分からないから何でもない」という意味ではありません。

症状が強くなったり、新しいしびれや筋力低下などが出たりした場合には、早めに再受診していただき、その時点で改めて診断と対策を考えます。

16.神経ブロックが診断の手がかりになることもあります

詳しい検査を行っても原因を完全に特定できず、それでも強い神経症状が続く場合があります。

例えば、画像では決定的な所見がなくても、L5など特定の神経領域に一致した明らかな症状がある場合には、診断と治療を兼ねて神経ブロックを行うことがあります。

その神経を治療して症状が軽減すれば、その神経が痛みに関与していることを考える手がかりになります。

ただし、神経ブロックは痛みを伴う処置です。そのため、軽い症状に対して診断だけを目的に行うことは基本的にありません。

神経ブロックを行うのであれば、診断の手がかりを得るだけではなく、ある程度長期間にわたって強い症状を緩和するという治療としての意味も重要だと当院では考えています。

17.腰の画像でも、背骨だけを見るわけではありません

腰痛のレントゲンやMRIでは、当然腰椎を詳しく確認します。しかし、画像に写っているのは背骨だけではありません。

画像の中に、整形外科以外の重大な病気が偶然写っていることがあります。

  • 腹部大動脈瘤
  • 尿路結石など腎・尿路の異常
  • 腎臓の腫瘍
  • 膀胱の腫瘍
  • 撮影範囲によっては肺などの病変

重大な異常が見つかった場合には、その時点で患者さんに説明し、必要な診療科への受診につなげます。

当院では、「腰のMRIだから背骨だけを見る」「肩のレントゲンだから肩だけを見る」という見方をしないよう、画像に写っている範囲を端から端まで確認することを大切にしています。

これは医師だけではなくレントゲン技師にも共有している考え方です。レントゲン技師が単純写真を見て「何かおかしい」と感じた場合には医師へ報告し、必要であれば追加撮影を行います。

また、週2回カンファレンスを行い、MRIやレントゲン画像について確認・検討しています。

消化管など、腰部MRIや単純レントゲンでは評価が難しい病変もあります。それでも、整形外科的な所見だけでは説明できない異常がある場合には、その所見について検討することを大切にしています。

腰を診るときにも、患者さん全体を見ることが重要です。

18.レントゲン・MRIは患者さんと一緒に確認します

ごうだ整形外科では、レントゲンやMRIを医師だけが先に見て結論を出し、その結果だけを患者さんに伝えるという診察ではありません。

医師が一つ一つの画像を確認するタイミングと、患者さんが画像を見るタイミングは基本的に同じです。

撮影したレントゲンを患者さんと一緒に見ながら、一枚ずつ説明します。MRIでも、診察で例えばL5神経の症状が疑われていれば、その神経周囲や上下の部位に異常がないかを確認しながら、画像と現在の症状が合っているかを説明します。

画像を見ることは、患者さんに病名を告げるだけのためではありません。「なぜこの症状が出ていると考えるのか」を患者さんと共有するための大切な診療の一部です。

19.「病名」と「病態」は必ずしも同じではありません

現在の保険診療では、カルテやレセプトに記載する病名には、登録できる決められた名称があります。

患者さんに対しても、「椎間板ヘルニアです」「脊柱管狭窄症です」「圧迫骨折です」と、分かりやすい病名で説明することは大切です。

しかし、実際の患者さんの身体では、病名一つだけで症状をすべて説明できないことがあります。椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症が重なっている場合もあります。

そのため当院では、病名だけではなく、「どの部分がどの神経に影響して、なぜ今の痛みやしびれが起きているのか」という病態を考えることを重視しています。

病名と実際の病態が必ずしも一致しない場合には、その病態についてもカルテに記載し、患者さんにもできるだけ分かりやすく説明します。

 

 

ごうだ整形外科の腰痛診断の流れ

当院の腰痛診療をまとめると、次のような流れになります。

順番

診療の流れ

1

看護師による問診

2

問診をもとに、多くの患者さんで診察前にレントゲン撮影

3

診察室へ入ってくる歩き方・姿勢を観察

4

座り方・楽な姿勢を確認

5

医師による問診

6

前屈・後屈など身体の動きを確認

7

腰・殿部の触診

8

SLR・股関節・仙腸関節の診察

9

筋力・感覚・腱反射などの神経学的診察

10

レントゲンを患者さんと一緒に確認

11

必要に応じてMRI

12

症状・身体所見・画像が一致しているかを確認

13

病態を考え、治療方針を決定

腰痛では、一つの検査だけで診断が決まることは多くありません。それぞれの情報をつなぎ合わせることで、痛みの原因に近づいていきます。

ごうだ整形外科の治療

診断後の治療は、原因と症状の強さによって異なります。

症状が比較的軽い場合には、薬物療法や運動療法などの保存治療を行います。

一方、椎間板ヘルニアなどによる神経痛が非常に強く、仕事や家事などの日常生活が困難な場合には、神経ブロックを検討することがあります。必要な場合にはMRIで神経圧迫の位置を確認し、症状と画像を照らし合わせたうえで治療する神経を決めます。

麻痺や膀胱直腸障害などがある場合や、保存治療だけでは改善が難しい場合には、手術治療を検討することもあります。

ごうだ整形外科の診療方針

腰痛診療の目的は、単にカルテに病名を書くことではありません。

患者さんの話を聞き、歩き方や姿勢を見て、身体を触り、神経の状態を確認し、その所見をレントゲンやMRIと照らし合わせます。

そして、「患者さんが今感じている痛みやしびれが、どこから、なぜ起こっているのか」を考えます。

画像と症状が一致しないこともあります。詳しく検査しても、原因を一つに断定できないこともあります。

その場合でも、画像に大きな異常がないから痛みも大したことがない、とは考えません。まず見逃してはいけない重大な病気がないことを確認し、そのうえで患者さんが困っている症状をどう軽減するかを考えます。

病名をつけることが診断のゴールではありません。患者さんの症状を理解し、適切な治療につなげることが腰痛診断の目的です。

腰痛の診断についてよくある質問

Q1.レントゲンだけで椎間板ヘルニアは分かりますか?

椎間板や神経そのものは、通常のレントゲンだけでは十分に評価できません。椎間板ヘルニアや神経圧迫を詳しく確認する必要がある場合にはMRIを検討します。

Q2.腰痛なら全員MRIを撮った方がいいですか?

全員に必要なわけではありません。問診、身体診察、レントゲンなどから、麻痺、圧迫骨折、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが疑われ、より詳しい評価が必要な場合にMRIを行います。

Q3.MRIで異常がなければ、腰痛の原因はないということですか?

いいえ。腰痛ではMRIを撮っても痛みの原因を一つに特定できないことがあります。画像で原因がはっきりしなくても、患者さんが感じている痛みがなくなるわけではありません。重大な病気が隠れていないかを確認したうえで、症状を軽減する方法を考えます。

Q4.大きな椎間板ヘルニアがあると必ず強く痛みますか?

必ずしもそうではありません。MRI上では大きなヘルニアがあっても症状がほとんどない場合があります。反対に、画像上の圧迫がそれほど大きくなくても非常に強い痛みが出ることがあります。

Q5.腰痛なのに股関節を診察するのはなぜですか?

腰に痛みを感じていても、股関節や仙腸関節など腰以外の部分が原因になっていることがあるためです。腰椎だけを診察すると、本当の原因を見逃す可能性があります。

Q6.SLRが正常なら椎間板ヘルニアではありませんか?

いいえ。SLRで典型的な下肢痛が出なくても椎間板ヘルニアが存在することがあります。症状、筋力、感覚、腱反射、必要に応じたMRIなどを組み合わせて判断します。

Q7.検査をしても腰痛の原因が分からない場合はどうしますか?

まず骨折、腫瘍、感染症、強い神経圧迫など重大な病気がないかを確認します。症状が強く、特定の神経領域との関連が疑われる場合には、治療と診断を兼ねて神経ブロックを検討することもあります。

Q8.腰のMRIから内臓の病気が見つかることがありますか?

あります。腰部の画像には大動脈、腎臓、膀胱など腰椎以外の組織も一部写ります。腹部大動脈瘤や腎・尿路などの異常が偶然見つかる場合もあるため、当院では背骨だけではなく画像に写っている範囲全体を確認するようにしています。

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監修者

合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長

佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長

清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長

記事情報

記事番号

L-013

記事名

整形外科医は腰痛をどう診断する?|問診・歩き方・触診・神経診察・レントゲン・MRIまで

シリーズ

ごうだ整形外科の腰痛ナビゲーション

監修

合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

公開日

未定

更新日

未定