• L-014 腰痛の検査|レントゲン・MRI・CTで何がわかる?
  • 【中編】腰のMRIで何がわかる?神経・椎間板・脊柱管をどう見るのか

監修/合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

前編では、腰痛診療で行うレントゲンについて解説しました。

レントゲンは、骨の形や並び、骨折、すべり症などを確認するために非常に重要な検査です。

一方で、椎間板、神経、筋肉、靱帯、脊柱管の中の軟部組織などは、通常のレントゲンでは十分に見ることができません。

そこで重要になるのがMRI検査です。

MRIでは、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、神経の圧迫、骨髄の変化など、レントゲンでは分かりにくい病態を詳しく確認することができます。

ただし、MRIも「撮れば腰痛の原因がすべて分かる検査」ではありません。

大切なのは、患者さんの症状や診察所見とMRI画像が一致しているかを見ることです。

8.MRIは「神経や椎間板を見るための検査」です

MRIは、強い磁場と電波を利用して身体の内部を画像化する検査です。

X線を使うレントゲンやCTとは異なり、通常のMRI検査では放射線被ばくはありません。

腰椎MRIでは主に、椎間板、神経、脊柱管、椎間孔、靱帯、筋肉、骨髄、軟部組織などを詳しく見ることができます。

そのため、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、神経根の圧迫、黄色靱帯の肥厚、圧迫骨折、腫瘍、感染症などを調べるうえで、MRIは非常に重要な検査です。

9.MRIでも、まず「画像全体」を見ます

当院でMRIを見るときも、レントゲンと基本的な考え方は同じです。

最初から「ここにヘルニアがあるはずだ」と決めて、その部分だけを見るわけではありません。

まず画像全体を確認し、腰椎全体のアライメント、椎体の形、骨髄の変化、脊柱管の異常、腰椎以外に気になるものが写っていないかなどを、画像の隅々まで確認します。

そのうえで、診察から疑っている病変を詳しく見ていきます。

「疑った場所だけを見る」のではなく、まず全体を見てから細部を見る。

10.患者さんの症状から「MRIのどこを見るか」を決めます

MRIは、画像だけを見て病名を探す検査ではありません。診察によって「どの神経に問題がありそうか」を考えたうえで、MRIを確認します。

例えば、診察でL5神経の症状が疑われた場合には、L4/5でL5神経が圧迫されていないか、椎間板ヘルニアがないか、脊柱管や外側陥凹が狭くなっていないか、L5/S1の椎間孔で神経が圧迫されていないか、椎間孔よりさらに外側に病変がないかなどを確認します。

症状 → 診察 → 障害神経を推測 → MRIでその場所を確認

11.MRIでは椎間板ヘルニアをどのように見る?

椎間板ヘルニアでは、椎間板の一部が後方などへ突出し、神経に影響を与えることがあります。

MRIでは、どの椎間板にヘルニアがあるか、どの方向へ突出しているか、神経に接触しているか、神経をどの程度圧迫しているか、椎間孔の中や外側にヘルニアがないかなどを確認します。

ただし、大きなヘルニアがあるから必ず強く痛むとは限りません。MRIでは大きなヘルニアが写っていてもほとんど症状がない方もいます。反対に、画像上の圧迫がそれほど大きく見えなくても、非常に強い神経痛が出る方もいます。

そのため、ヘルニアの大きさだけで重症度を判断することはできません。

12.脊柱管狭窄症はMRIで何を見る?

腰部脊柱管狭窄症では、神経が通る脊柱管や神経の出口が狭くなります。

その原因は一つではなく、椎間板の膨隆、椎間関節の変形、黄色靱帯の肥厚、腰椎すべり症、骨性の変形などが複数組み合わさって神経を圧迫していることがあります。

レントゲンでは骨の変形などを確認できますが、脊柱管の中で実際に神経がどの程度圧迫されているかを見るにはMRIが重要です。

また、脊柱管中央だけではなく、神経が外へ出ていく椎間孔にも注意します。

13.MRIは「形」だけでなく病変の性質も調べられます

MRIには、同じ場所を異なる条件で撮影する複数の方法があります。これをシークエンスと呼びます。

代表的なものにT1強調画像やT2強調画像などがあります。

複数の画像を比較することで、液体成分が多いのか、炎症が疑われるのか、出血成分が含まれているのか、骨髄に異常があるのか、腫瘍性病変を疑うのかなど、単に「何かがある」というだけではなく、その病変がどのような性質を持っているのかを推測する材料になります。

MRIの読影には、画像と臨床症状を結びつける経験が必要です。一つの画像だけで判断せず、複数のシークエンスを組み合わせて考えることが重要です。

14.岩見沢と札幌では異なるタイプのMRIを使用しています

ごうだ整形外科では、施設によって異なるMRI装置を使用しています。

岩見沢ごうだ整形外科

1.5テスラMRIを導入しています。

一般的に、磁場強度が高いMRIは、細かな構造を確認しやすく、精細な画像を得ることができます。腰椎の椎間板、神経、脊柱管、骨髄などを詳しく評価する際に有用です。

北7条ごうだ整形外科

札幌では、0.3テスラのオープン型MRIを使用しています。

オープン型MRIは、一般的なトンネル型MRIと比較して周囲が開放されているため、閉所が苦手な方や狭い場所に強い不安を感じる方などにとって検査を受けやすい場合があります。

MRIは「磁場強度が高ければすべてにおいて優れている」という単純なものではありません。画像の精細さ、撮影時間、患者さんの体格や姿勢、閉所への不安などによって、それぞれの装置に特徴があります。

15.MRIが必要でも、撮影が難しい患者さんがいます

MRIは安全性の高い検査ですが、誰でも無条件に撮影できるわけではありません。撮影前には、体内金属や医療機器などについて確認する必要があります。

ペースメーカーなどの体内医療機器

以前は「ペースメーカーが入っているとMRIは撮れない」と考えられることが一般的でした。

現在はMRI対応のペースメーカーなどもありますが、すべての機器がMRIに対応しているわけではありません。

そのため、ペースメーカーやICDなどが入っている場合には、機種やMRI対応の可否を事前に確認する必要があります。対応状況によっては、専門施設でのMRI撮影が必要になります。

骨折手術などで身体に金属が入っている場合

骨折手術で使用したプレート、スクリュー、人工関節などの金属が身体に入っていても、MRIが撮影できる場合は多くあります。

ただし、金属の材質、MRI装置との適合性、撮影する部位との位置関係などを確認する必要があります。撮影部位の近くに金属がある場合には、画像が乱れて見えにくくなることもあります。

「身体に金属が入っている=MRIは絶対に撮れない」というわけではありません。事前に必ずスタッフへ伝えてください。

16.タトゥー・アートメイクがある場合

タトゥーやアートメイクに使用される色素の中には、金属成分を含むものがあります。

そのためMRI撮影中に、非常にまれではありますが、熱く感じる、ヒリヒリする、違和感が出るなどの反応が起こることがあります。

特に眉やアイラインなどのアートメイクをしている場合も、MRI前に申告していただくことが大切です。

ただし、タトゥーやアートメイクがあるだけで、必ずMRIができないわけではありません。種類や範囲などを確認し、安全性を判断します。

17.ジェルネイル・ネイルアートもMRI前に確認します

最近、MRI撮影で注意が必要になっているものの一つが、ジェルネイルやネイルアートです。

製品によっては金属成分や磁性を持つ材料が含まれていることがあります。そのため、使用しているネイルによっては、MRI画像への影響や発熱などの安全上の問題を考慮し、検査前に除去をお願いする場合があります。

「ジェルネイルなら必ずMRIができない」という意味ではありません。ただし、当日になって検査ができなくなることを避けるためにも、MRI予定がある場合は事前にスタッフへお伝えください。

18.閉所恐怖症がある場合

MRIでは、装置の中で一定時間じっとしている必要があります。

閉所恐怖症が軽度であれば、10~20分程度の検査を問題なく受けられる方もいます。一方、閉所への恐怖が非常に強い方では、MRI装置に入っただけで強い不安やパニック症状が出ることもあります。

そのような患者さんでは、周囲が開放されたオープン型MRIが選択肢になります。

北7条ごうだ整形外科ではオープン型MRIを導入しているため、通常型MRIが苦手な方でも検査できる可能性があります。

19.痛くてMRIに寝ていられない場合はどうする?

腰痛が非常に強い患者さんでは、MRIを撮りたいけれど、仰向けで長時間寝ていること自体ができないということがあります。

その場合、無理に撮影を続けるわけではありません。

当院では、診察所見から痛みの原因となる神経などをある程度推測できる場合には、先に神経ブロックなどで強い痛みを軽減し、その後にMRI撮影を行うことがあります。

つまり、検査をするために治療を先に行う場合もあります。腰痛診療では、検査の順番を固定するのではなく、その患者さんが今どのような状態なのかに合わせて対応します。

20.造影MRIは通常の腰痛ではほとんど行いません

MRIには、造影剤を使用する造影MRIがあります。

造影剤を使うことで、通常のMRIだけでは分かりにくい病変の性質や広がりについて、追加の情報が得られることがあります。

例えば、腫瘍を疑う場合、感染症の広がりを詳しく確認する場合、手術後の病変を評価する場合、病変の性質をさらに詳しく確認する必要がある場合などに造影MRIが行われることがあります。

一方で、一般的な椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折の一次診療では、造影剤を使用しなくても必要な情報が得られることが多くあります。

21.椎間板ヘルニアの周囲が造影されることがあります

椎間板ヘルニアでは、脱出した椎間板の周囲が造影されることがあります。

これは、脱出した椎間板の周囲に炎症反応や新生血管などが生じている状態を反映していると考えられています。

このような周辺の造影所見は、ヘルニアが将来的に縮小・吸収する可能性を考える一つの参考になることがあります。

ただし、造影されたから必ず自然にヘルニアがなくなると断定できるものではありません。症状や通常MRIの所見、経過などを合わせて判断する必要があります。

22.ごうだ整形外科で造影MRIをほとんど行わない理由

ごうだ整形外科では、造影MRIを行うことは非常に少なくなっています。岩見沢でも、過去10年程度で造影MRIを行った例はごくわずかです。

理由の一つは、当院が腰痛・整形外科疾患の一次診療を担う医療機関だからです。

通常のMRIで「腫瘍の可能性がある」「感染症をより詳しく調べる必要がある」「造影検査を含めた専門的評価が必要」と判断した場合には、自院ですべての検査を完結させるのではなく、必要に応じて専門医療機関へ紹介します。

また、造影剤にはまれではありますが副作用やアレルギー反応などのリスクもあります。

そのため、造影することで診療方針が変わるだけの医学的な必要性があるかを考えて使用することが重要です。

中編まとめ|MRIは「異常を探す検査」だけではありません

MRIでは、椎間板、神経、脊柱管、椎間孔、靱帯、筋肉、骨髄など、レントゲンでは十分に見えない部分を詳しく確認できます。

しかし、MRI画像だけを見て診断が完成するわけではありません。

重要なのは、「患者さんの症状を説明できる病変がMRIにあるか」という視点です。

大きなヘルニアがあっても痛くない患者さんがいる一方、画像上の変化が小さくても非常に強い症状が出る患者さんもいます。

そのため、症状・身体診察・MRIを照らし合わせることが非常に重要になります。

またMRIには、体内医療機器、金属、閉所恐怖症、タトゥー・アートメイク、ジェルネイル、強い痛みで姿勢を保てない場合など、撮影前に確認すべき事項があります。検査を安全に行うためにも、気になることがあれば撮影前にスタッフへお伝えください。

後編へ続く

【L-014 後編】CTはいつ必要?どこまで検査すればいい?

後編では、CTとMRIは何が違うのか、腰痛診療でCTを使う場面、CTの放射線被ばく、検査は多ければ多いほどよいのか、ごうだ整形外科で初診当日のMRIを重視する理由、医学的にMRIが必要な場合、神経ブロック前にMRIが重要な理由、神経支配は教科書どおりとは限らない、他院で撮ったMRIは撮り直す必要があるのか、画像検査と患者さんの安心、ごうだ整形外科の画像診断の考え方について詳しく解説します。