K-007 膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける? 【後編】いつ手術する?|HTO・UKA・TKAと治療のゴール
K-007 膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける?
【後編】いつ手術する?|HTO・UKA・TKAと治療のゴール
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
保存療法を続けても、膝痛のため日常生活が大きく制限される患者さんでは、手術を検討することがあります。
しかし、「レントゲンが悪い=手術」ではありません。

26.「進行期」と「末期」は同じ意味ではありません
変形が強い膝に対して、「もう末期です」と説明され、不安になった患者さんもいます。
ごうだ整形外科では、必要以上に患者さんを怖がらせる表現は避け、「変形が進行している」と説明するようにしています。
膝OAはがんとは違います。画像が進行しているからといって、それだけで生命にかかわる状態という意味ではありません。
27.手術を決めるのはレントゲンではなく「生活」
変形が非常に強くても、それほど痛くなく生活している患者さんはいます。反対に、画像の変形以上に強い痛みで困っている患者さんもいます。
したがって、手術するかどうかは画像の進行度だけでは決めません。最も重要なのは、膝痛がその人の生活をどれほど妨げているかです。
関節置換術への紹介や検討は、症状がQOLを大きく損ない、適切な非手術治療が十分な効果を示さない場合に臨床的に判断します。
28.手術は「楽しい生活を取り戻すため」の治療
膝手術の目的は、「手術しないと命が危ないから」ではありません。
散歩に行きたい、ゴルフをしたい、旅行へ行きたい、温泉へ行きたい、孫と動物園へ行きたいという生活を、膝痛のため諦めている患者さんがいます。
その生活を取り戻すことが膝手術の大きな目的です。
29.手術のタイミングは患者さんと一緒に決めます
医師が、「このレントゲンだから来月手術です」と一方的に決めるものではありません。
患者さんが、「今の生活ならまだ保存治療で続けたい」という場合もあれば、「もう歩けないので手術を受けたい」という場合もあります。
患者さんが何をしたいのかを確認しながら決めていきます。
30.高齢者では「5年後」も考える必要があります
一方で、高齢者では少し違った視点も必要です。今は薬や注射で痛みをコントロールできても、5年後に同じ治療で生活できる保証はありません。
さらに年齢や持病によっては、将来手術そのものが難しくなる可能性もあります。
特に北海道では、一人暮らしや高齢夫婦だけで生活している方も少なくありません。「将来、膝がさらに悪化して一人で動けなくなったら、どのように生活するか」まで一緒に考える必要があります。
これは手術を勧めるために不安をあおるのではなく、患者さん自身が将来の選択肢を考えるための説明です。
31.HTO|自分の関節を残しながら荷重軸を変える
高位脛骨骨切り術(HTO)は、脛骨を骨切りしてアライメントを変え、膝内側へ集中している荷重を外側へ移す手術です。
自分の膝関節を温存できることが大きな特徴です。比較的活動性の高い患者さんなどで選択されることがあります。
将来変形が進行した場合には、人工膝関節を検討することもあります。
32.UKA|傷んだ部分だけを人工関節へ置き換える
UKA(単顆型人工膝関節置換術)は、膝の一部分を人工関節へ置換する方法です。
適応が合えば、正常部分を残せる、靱帯を温存できる、生理的な膝の動きに近づけやすいという特徴があります。
ただし、すべての患者さんにできる手術ではありません。
33.TKA|膝関節全体を人工関節へ置換する
TKA(人工膝関節全置換術)は、変形が広範囲に進行した場合などに用いられます。
現在はインプラントや手術手技、周術期管理、リハビリが進歩しています。
ただし、HTO・UKA・TKAのどれが一番優れているという単純な比較ではありません。年齢、変形の場所、靱帯機能、活動性、骨の状態などを総合して術式を選びます。
34.術式選択には術者の経験も関係します
同じ膝でも、選択できる手術が一つとは限らないことがあります。
その場合には、患者さんの状態、術式の特徴、使用するインプラント、術者の経験などを総合して決定します。
大切なのは、患者さんにそれぞれのメリット・デメリットを説明したうえで選択することです。
35.人工関節の目標は「痛みに大きく邪魔されず歩けること」
人工膝関節手術で、ごうだ整形外科が最も大切と考える目標は、痛みに大きく邪魔されず歩けるようになることです。
「正座ができるようになること」を主目的にはしません。深い屈曲には個人差があり、人工関節後でも正座が難しい患者さんは少なくありません。
36.「手術をすれば痛みが全部なくなる」とは説明しません
人工関節手術でも、術後にすべての感覚が元通りになるわけではありません。
傷の痛み、寒い時期の違和感、膝周囲のしびれ・感覚低下、人工物が入っている感覚などが残る場合があります。
したがって、「手術すれば100%痛みがゼロになります」とは説明しません。
37.手術成功とは「患者さんが生活を取り戻すこと」
手術後のレントゲンがきれいでも、患者さんが「思っていた生活ができない」と感じれば十分な満足につながらない場合があります。
一方で、「以前は外出できなかったけれど、今は旅行できる」ようになれば、大きな意味があります。
つまり、手術成功とは画像だけでなく、患者さん自身がどれだけ生活を取り戻せたかでも評価する必要があります。
K-007まとめ|膝治療の目的は「膝を治すこと」だけではありません
膝痛治療は、診断→痛みのコントロール→薬・注射→リハビリ→体重・アライメントの改善→必要なら再生医療→必要なら手術、と段階的に考えていきます。
そして最終的な目的は、レントゲンをきれいにすることでも、痛みをゼロにすることだけでもありません。
患者さんが、歩く、働く、旅行する、趣味を楽しむ、家族と出かけるという生活を取り戻すことです。
膝痛の治療についてよくある質問
Q1.変形性膝関節症は薬だけで治りますか?
薬は痛みや炎症を軽減する手段の一つです。筋力、可動域、体重、アライメントなども含めて治療を組み合わせます。
Q2.ヒアルロン酸注射は何回すれば効きますか?
製剤や患者さんの状態によって異なります。ごうだ整形外科では症状の変化を見ながら使用し、効き方が乏しければ別の治療も検討します。
Q3.膝が痛くても運動した方がいいですか?
痛みを我慢して高負荷運動をする必要はありません。等尺性運動や痛みの出ない範囲の歩行など、病態に合わせて行います。
Q4.体重を減らすと膝痛は改善しますか?
過体重・肥満を伴う変形性膝関節症では、減量によって疼痛・機能が改善することがあります。
Q5.PRP-FDで軟骨は再生しますか?
軟骨が元通り再生すると説明できる治療ではありません。疼痛や機能改善を目的とした選択肢の一つとして位置づけます。
Q6.半月板や靱帯断裂も再生医療で治りますか?
切れた半月板や断裂した靱帯が注射だけで完全に元通りになるとは考えていません。病態に応じた治療が必要です。
Q7.レントゲンの変形が強ければ手術ですか?
画像だけでは決めません。保存療法への反応、歩行能力、生活への支障、患者さんが望む生活を総合して判断します。
Q8.人工関節をすれば痛みは完全になくなりますか?
多くの患者さんで痛みや機能の改善が期待できますが、創部痛や違和感などが残る場合もあります。手術前に期待できることと限界を説明することが重要です。
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医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における膝治療の実際と臨床経験を一次情報として構成しています。膝専門医としての専門的見解を示すものではありません。
医学的確認では、膝OAで運動療法・必要に応じた体重管理が治療の中核であること、外用NSAIDsが膝OAの薬物療法の選択肢であること、PRPは疼痛・機能改善の可能性がある一方エビデンスの確実性に限界があること、間葉系細胞培養上清液は標準治療として有効性・長期安全性が確立していないこと、関節置換術の判断では画像だけでなく症状・機能・QOLと保存治療への反応を重視することを標準的な医学知見と照合しています。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-007
記事名:膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける?
掲載区分:後編/手術・HTO・UKA・TKA・人工関節・治療のゴール
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定


