K-006 膝痛の検査|レントゲン・MRI・エコーで何がわかる? 【後編】MRI・エコーはいつ使う?|半月板・靱帯・軟骨・骨の中を見る

K-006 膝痛の検査|レントゲン・MRI・エコーで何がわかる?
【後編】MRI・エコーはいつ使う?|半月板・靱帯・軟骨・骨の中を見る
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
前編では、膝痛でまずレントゲンを撮る意味について解説しました。
しかし、レントゲンだけでは分からない病態があります。
そこで使うのが、MRIやエコー(超音波検査)です。
それぞれ得意なものが違います。
11.MRIを行う一番の目的は「レントゲンに写らないものを見ること」
膝MRIの大きな目的は、レントゲンでは直接見えにくい組織を評価することです。
代表的なのは、半月板、前十字靱帯、後十字靱帯、側副靱帯、関節軟骨、骨髄・軟骨下骨などです。
特に半月板や十字靱帯は、単純レントゲンでは直接見ることができません。
MRIではこれらの関節内構造を詳しく確認できます。
12.半月板損傷ではMRIが重要
問診や診察で、関節裂隙の圧痛、ひねり動作での痛み、ロッキング、McMurrayテストなどから半月板損傷を疑った場合、MRIを検討します。
MRIでは、「ここが半月板です」「この部分に断裂があります」と、患者さんと一緒に実際の画像を見ながら説明することができます。
若いスポーツ選手にとって、自分の膝で何が起きているかを画像として理解することは、その後の治療や競技復帰を考えるうえでも役立ちます。
13.靱帯損傷もMRIで評価できます
スポーツ外傷などで、前十字靱帯、後十字靱帯、側副靱帯などの損傷を疑う場合にもMRIが有用です。
もちろん診断はMRIだけで行うわけではありません。
受傷時の状況、不安定感、腫れ、Lachmanテストや前後方引き出しテストなどの身体診察とMRIを合わせて判断します。
14.軟骨もMRIで評価します
関節軟骨は単純レントゲンでは直接見ることができません。
MRIでは、軟骨の状態をより詳しく確認できます。
例えば若いスポーツ選手で、「普通に歩くのは大丈夫だが、運動すると痛い」という場合、軟骨や膝蓋大腿関節周囲の問題を疑うことがあります。
K-005で解説したコンドロマレーシアなども、MRIが診断の参考になる場合があります。
15.MRIは骨の「中」も見ます
MRIが優れているのは軟部組織だけではありません。
骨の内部の変化を確認できることも非常に重要です。
例えば、膝の軟骨下脆弱性骨折では、初期には単純レントゲンで明らかな異常が出ないことがあります。
それでも患者さんは、急に強く痛む、体重をかけると痛い、夜間も痛いという症状を訴えることがあります。
こうした場合には、MRIで骨髄内の変化や骨折線などを確認することがあります。
レントゲンが正常でも症状が強ければ、骨内部の病変を考える必要があります。
16.「レントゲンでは異常なし。でもすごく痛い」は重要な情報
画像診断で大切なのは、レントゲンに何も写っていないから終わりと考えないことです。
診察上、「この痛みの強さをレントゲンだけでは説明できない」と感じた場合には、半月板、靱帯、軟骨、軟骨下骨など、別の原因を考えます。
このような場面でMRIが重要になります。
17.MRIは診断だけでなく「患者さんへの説明」にも使います
先生の診療でMRIを使うもう一つの目的が、患者さんへの説明です。
特に若いスポーツ選手では、「半月板が悪いです」と言葉だけで説明するより、実際にMRIを一緒に見て、「これが半月板で、ここに損傷があります」と説明する方が理解しやすいことがあります。
画像は医師が診断するためだけではなく、患者さん自身が病態を理解するための材料にもなります。
18.では「最初からMRI」ではダメなの?
患者さんから、「レントゲンでは分からないことが多いなら、最初からMRIを撮ってください」と言われることがあります。
しかし、MRIだけですべてを評価するわけではありません。
レントゲンには、骨の形、骨折、骨棘、骨硬化、アライメント、荷重位での関節裂隙など、レントゲンだからこそ評価しやすい情報があります。
特に立位で荷重したときの関節裂隙は、通常のMRIでは同じ条件で評価するものではありません。
そのため、「MRIの方が高性能だから先にMRI」ではなく、目的に応じて使い分けることが重要です。
19.エコーでは何が分かる?
膝のエコー、つまり超音波検査も有用な検査です。
エコーは特に、関節水腫、滑膜炎、ベーカー嚢腫、膝蓋腱、大腿四頭筋腱、側副靱帯、鵞足部、腸脛靱帯などの表在性組織の評価に向いています。
膝超音波では、関節液、滑膜、伸展機構、側副靱帯、腱、滑液包、後方組織など幅広い表在構造を評価できます。
20.ベーカー嚢腫はエコーでもよく分かります
膝裏にベーカー嚢腫がある場合、エコーは非常に便利です。
袋状の液体貯留を、その場で確認できます。
ベーカー嚢腫の有無を調べる目的では、超音波は有用な検査です。
21.半月板をエコーで見ることもできます
半月板の一部はエコーでも観察できます。
ただし、半月板全体を詳細に評価する場合にはMRIの方が適しています。
特に関節の深部、十字靱帯、骨髄内など、エコーが届きにくい部分があります。
したがって、「エコーで半月板が見える=MRIと同じ情報が得られる」というわけではありません。
22.エコーが苦手なのは「骨の中」です
超音波は骨の表面で大部分が反射します。
そのため、骨髄、軟骨下骨、骨内部の病変を詳しく見ることには向いていません。
軟骨下脆弱性骨折など、骨内部の異常を疑う場合にはMRIが重要です。
23.MRIが難しい患者さんではエコーを利用することがあります
MRIを受けにくい患者さんもいます。
例えば、強い閉所恐怖症、MRI安全確認上の問題、身体状況によってMRI撮影が難しい場合です。
また、一部の化粧品・装飾品などでは金属成分が問題になる可能性があるため、MRI前には施設ごとの安全スクリーニングが必要です。
そのため、「ネイルをしているから必ずMRIができない」わけではなく、事前にMRI施設へ確認することが必要です。
MRIが難しい場合には、病態によってエコーを補助的に使うことがあります。
24.エコーを見ながら注射する方法もあります
超音波を見ながら針を進める超音波ガイド下注射・穿刺という方法があります。
超音波ガイドは針の位置を確認でき、膝関節内注射・穿刺の正確性を高める方法として利用されています。
一方、ごうだ整形外科では、通常の膝関節注射・穿刺については、解剖学的ランドマークを確認して行うことが多いです。
どちらか一方だけが正しいということではなく、患者さんの状態や目的、医師の技術・経験などによって方法を選択します。
25.レントゲン・MRI・エコーをどう使い分ける?
膝痛の画像検査は、基本的に次のように考えます。
レントゲン:骨・変形・アライメント・荷重時の関節裂隙を見る。
MRI:半月板・靱帯・軟骨・骨髄・軟骨下骨を見る。
エコー:関節水腫・滑膜・腱・滑液包など表在性組織をリアルタイムに見る。
重要なのは、どの検査が一番優れているかではなく、「何を疑っているか」によって検査を選ぶことです。

26.検査をたくさんすれば診断精度が上がるわけではありません
「全部検査すれば安心では?」と思うかもしれません。
しかし、必要性の低い検査を増やせば、必ず診断がよくなるわけではありません。
検査は、問診と診察によって何を疑うかを考え、その答えを確認するために行うものです。
ごうだ整形外科では、診察 → レントゲン → 必要ならMRI・エコーという流れで、その患者さんに必要な検査を選んでいきます。
K-006まとめ|MRIがレントゲンより「上」というわけではありません
膝の検査には、それぞれ役割があります。
レントゲンは骨・変形・アライメント・荷重時の関節裂隙。
MRIは半月板・靱帯・軟骨・骨内部。
エコーは関節水腫・滑膜炎・腱・ベーカー嚢腫などの表在性病変を見るのが得意です。
つまり、レントゲン → MRI → エコーという優劣ではなく、それぞれ見るものが違う、ということです。
そして検査結果だけではなく、患者さんの症状+診察所見+画像を合わせて診断することが重要です。
膝の検査についてよくある質問
Q1.膝が痛いなら最初からMRIを撮った方がよく分かりますか?
必ずしもそうではありません。骨・アライメント・荷重時の関節裂隙など、レントゲンで確認することが重要な情報があります。
Q2.レントゲンで軟骨は見えますか?
軟骨そのものは直接見えません。関節裂隙の狭さなどから軟骨の状態を間接的に評価します。
Q3.半月板はレントゲンで見えますか?
通常のレントゲンでは直接確認できません。診察で半月板損傷を疑った場合にはMRIを検討します。
Q4.レントゲンが正常でもMRIで異常が見つかることがありますか?
あります。半月板、靱帯、軟骨、軟骨下骨などの異常が見つかることがあります。
Q5.変形性膝関節症ではなぜ立ってレントゲンを撮るのですか?
実際に体重をかけたときの関節裂隙の狭さを評価するためです。
Q6.膝のエコーでは何が分かりますか?
関節水腫、滑膜炎、ベーカー嚢腫、膝蓋腱などの表在性組織の評価に有用です。
Q7.ネイルをしているとMRIは撮れませんか?
一律に撮影できないわけではありません。製品や施設の安全基準によって対応が異なるため、撮影前にMRI施設へ確認してください。
Q8.エコーガイド下注射の方がよいですか?
超音波ガイドは針の位置を確認でき、高い正確性を示す研究があります。一方、膝関節は解剖学的ランドマークを用いた注射も一般的です。患者さんの状態や目的によって方法を選択します。
完成済み関連記事
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- K-005「整形外科医は膝痛をどう診断する?|問診・視診・触診・徒手検査」
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における膝画像検査の使い方と臨床経験を一次情報として構成しています。膝専門医・放射線診断専門医としての専門的見解を示すものではありません。
医学的確認では、慢性膝痛の初期画像としてレントゲンが基本であること、変形性膝関節症では荷重位レントゲンが関節裂隙狭小化の評価に有用であること、レントゲンで原因が十分分からない場合にはMRIが有用であること、MRIは半月板・靱帯・軟骨・骨髄・軟骨下骨の評価に有用であること、エコーは関節水腫、滑膜、腱、ベーカー嚢腫など表在性病変の評価に有用であること、MRI前には個別の安全スクリーニングが必要でありネイル等の存在だけで一律に撮影不可とはしないことを標準的な医学知見と照合しています。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-006
記事名:膝痛の検査|レントゲン・MRI・エコーで何がわかる?
掲載区分:後編/MRI・エコー・半月板・靱帯・軟骨・骨内部
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定


