監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

「健康診断で体重を減らすように言われた」「膝が痛くて整形外科へ行ったら、痩せるように言われた」「でも、膝や腰が痛くて運動できない」——このような悩みを抱えている方は少なくありません。

体重が増えると、高血圧、糖尿病、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな健康問題と関係します。整形外科の立場から見ると、さらに重要なのが膝や腰への負担です。

体重が増える → 膝や腰が痛くなる → 運動できなくなる → 筋力と活動量が低下する → さらに体重が増える。この悪循環に入ってしまう患者さんを、私たちは日常診療でよく経験します。

ごうだ整形外科が体重管理を行う理由は、単に「痩せてもらう」ためではありません。まず身体を軽くする。痛みを治療する。筋肉をできるだけ守る。少しずつ身体を動かす。最終的には歩ける身体を目指す。そこまでを一つの治療として考えています。

結論|「肥満」と「肥満症」は同じではありません

一般には「太っている」「体重が重い」という意味で肥満という言葉が使われます。しかし医学的には、肥満と肥満症は区別して考えます。

日本ではBMI 25以上が「肥満」と判定されます。BMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求めます。例えば身長160cm、体重70kgの場合、BMIは約27.3です。

しかし、BMI 25以上=全員が肥満症というわけではありません。肥満症は、肥満に関連する健康障害をすでに伴っている場合や、内臓脂肪蓄積などから健康障害を起こすリスクが高く、医学的に減量が必要と判断される状態です。

つまり肥満症は、「見た目を細くするための診断」ではなく、健康を守るために体重を減らす医学的な必要性がある状態と考えると分かりやすいでしょう。

BMIだけでは「身体の中身」までは分かりません

BMIは肥満を評価する重要な指標です。しかし、ごうだ整形外科ではBMIの数字だけを見て患者さんの身体を評価することはしません。

実際の診療では、「BMIはそれほど高くないのに、お腹だけ出てきた」「体重はそれほど重くないのに筋肉が少ない」という方もいます。逆に、同じ体重でも筋肉量が多く、身体を十分動かせる方もいます。

これは「BMIが低くても肥満症である」という意味ではありません。医学的な肥満・肥満症の診断基準と、筋肉量・脂肪量を含めた身体組成の評価は分けて考える必要があります。

ごうだ整形外科では、体重やBMIに加えて、必要に応じてInBodyを使用し、筋肉量、体脂肪量、体水分量などを確認します。

「何kgあるか」だけではなく、「その体重の中身を見る」。これが当院の体重管理の基本的な考え方です。

肥満症では、どのような健康問題が起こる?

肥満は単に体型の問題ではありません。体重増加や内臓脂肪の蓄積は、さまざまな健康障害と関連します。

高血圧

2型糖尿病・耐糖能異常

脂質異常症

脂肪肝

睡眠時無呼吸症候群

高尿酸血症・痛風

心血管疾患

膝関節などの運動器疾患

複数の問題を同時に抱えている患者さんも珍しくありません。このような場合、体重管理は単なる美容目的ではなく、複数の健康問題を改善するための治療の一部として考える必要があります。

肥満と睡眠時無呼吸症候群

体重が増えると、首や上気道周囲にも脂肪が蓄積し、睡眠中に気道が狭くなりやすくなることがあります。そのため肥満は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の重要なリスク因子の一つです。

睡眠時無呼吸症候群は、いびきや昼間の眠気だけの問題ではありません。高血圧や心血管疾患、脳卒中などとの関連も知られています。症状が疑われる場合には、適切な診断・治療が必要です。

整形外科でよく見る「肥満の悪循環」

整形外科では、体重増加と運動器の問題が非常に密接につながっている患者さんを診察します。

体重が増える → 膝・腰への負担が増える → 痛くて歩けない → 活動量が低下する → 筋力が低下する → さらに身体を動かしにくくなる → さらに体重が増える、という悪循環です。

患者さん自身も「痩せた方がいいことは分かっています」と話されます。内科では「体重を減らしましょう」、整形外科では「運動して筋力をつけましょう」と言われる。しかし患者さんからすると、「膝が痛くて歩けない」「腰が痛くて運動できない」「身体が重くて、少し動くだけで息が上がる」という状態です。

これでは、「痩せてください」「運動してください」だけでは悪循環から抜け出せません。

「運動してください」の前に、運動できる身体をつくる

肥満症の治療では運動が重要です。しかし、膝や腰が痛くて歩くこと自体がつらい患者さんに、最初から長時間のウォーキングを求めても続かないことがあります。

ごうだ整形外科では、まず「運動できる状態まで身体を戻すこと」を大切にしています。

低負荷の筋力トレーニング

自転車運動

水中運動

ストレッチ

身体の状態に合わせた運動療法

など、できるところから始めます。大切なのは、「激しい運動をしなければ意味がない」と考えないことです。

合田医師自身は週1回20分の低負荷運動から始めました

これは私自身の経験です。体重管理を行った際、Technogymを使用して、週1回、約20分の非常に低負荷な運動を行いました。汗をたくさんかくような運動でも、息が上がるような運動でもありません。

それでも身体組成を確認しながら継続したところ、私の場合は筋肉量を維持することができました。もちろん、「週1回20分運動すれば、誰でも筋肉量を維持できる」という意味ではありません。必要な運動量は年齢、体重、筋肉量、身体機能、食事内容などによって異なります。

まず、その人ができる運動から始める。それを続ける。そして身体が軽くなり、痛みが減ってきたら、少しずつ活動量を増やしていく。この順番が大切です。

最終的には「歩ける身体」を目指す

膝や腰が痛い方に、最初から無理に長時間歩いてもらうわけではありません。しかし、歩かなくてもよい身体を目指すわけでもありません。

歩行は日常生活の基本的な身体活動です。買い物に行く、病院へ行く、仕事へ行く、地下鉄の階段を上る、旅行する。こうした生活の多くに「歩く」という動作があります。

「痛いから歩けない」から「少しなら歩ける」、そして「以前より長く歩ける」へ。そのために、体重管理+膝・腰の治療+低負荷からの運動療法+筋肉量の維持を組み合わせます。

薬物療法は「動き始めるための入口」になることがあります

もともと身体を動かせる方であれば、薬物療法を一定期間利用して食欲・食事量をコントロールしながら、運動と組み合わせて体重を減らすという考え方があります。

一方で、膝や腰が痛くてほとんど運動できない方では、医師が薬物療法の適応を判断したうえで、まず体重を少し減らし、身体を動かすきっかけをつくるという考え方もあります。

当院の診療では、治療開始後に体重が少し減ったことで、「身体が少し軽くなった」「これなら少し動けそう」「運動をやってみようと思った」と話される患者さんがいます。この最初の変化が重要だと考えています。

薬物療法の目的を「薬で痩せること」だけにしない。薬物療法も利用しながら、身体を動かせる状態へ移行していく。これが、ごうだ整形外科の体重管理における薬物療法の考え方です。

肥満症はどのように診断する?

日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」では、BMI 25以上を肥満とし、そのうち肥満に起因・関連する健康障害を合併する場合、または内臓脂肪型肥満と診断される場合に、医学的な減量を必要とする「肥満症」と診断します。肥満症はBMIだけで決める診断ではありません。

内臓脂肪も重要です

BMIだけでなく内臓脂肪の蓄積も重要です。日本肥満学会では、ウエスト周囲長などから内臓脂肪蓄積が疑われ、腹部CTなどで内臓脂肪面積100cm²以上が確認された場合、内臓脂肪型肥満と診断します。InBodyによる身体組成測定と、肥満症の正式な診断に用いる内臓脂肪評価は同じものではありません。

肥満症治療の基本は、薬だけではありません

肥満症の治療では、食事療法、運動療法、行動療法が基本になります。そのうえで患者さんの状態や適応に応じて薬物療法を検討し、必要な場合には外科治療が選択されることもあります。当院でも薬だけで治療が完結するとは考えていません。

食事療法|極端に食べないことが目的ではありません

極端な食事制限によって短期間に体重を落とせばよいわけではありません。当院では、急激に体重が減った患者さんで筋肉量まで落ちているケースを経験します。食事量を整えながら、できるだけ筋肉量を維持することが重要です。

運動療法|最初から激しい運動は必要ありません

膝や腰が痛い患者さんでは、低負荷の筋力トレーニング、自転車運動、ストレッチなど、その人ができるところから始めます。体重が少し減り、痛みが軽くなり、身体が動かしやすくなったら少しずつ活動量を増やします。最終的には「歩ける身体」を目指します。

薬物療法|「動き始めるための入口」になることがあります

薬物療法は食欲や食事量をコントロールしながら一定期間体重を減らすための選択肢です。特に膝や腰が痛くて運動を始められない方では、医師が適応を判断したうえで、まず体重を少し減らして身体を動かす入口をつくる役割を持つことがあります。

ウゴービ・ゼップバウンドは誰でも使える薬ではありません

ウゴービとゼップバウンドは日本で肥満症に対して承認された医薬品ですが、単に「痩せたい」という希望だけで誰にでも使用する薬ではありません。厚生労働省は両剤について最適使用推進ガイドラインを定めています。ウゴービの肥満症ガイドラインは2026年6月、ゼップバウンドの肥満症ガイドラインは2026年5月に改訂されています。

マンジャロとの違いは?

マンジャロとゼップバウンドはいずれもチルゼパチドを有効成分としますが、日本で承認されている効能・効果が異なります。マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは一定の条件を満たす肥満症などについて承認されています。肥満・減量目的でマンジャロを使用する場合は適応外使用です。

InBodyで「何kg減ったか」ではなく「何が減ったか」を見る

当院では必要に応じてInBodyを使用し、筋肉量・体脂肪量・体水分量などを経時的に確認します。体重が減っていても筋肉量が大きく落ちていれば、運動内容や食事の状況を見直します。

膝・腰の痛みも同時に治療する

整形外科で体重管理を行う大きな意味の一つが、膝や腰の治療を同時に行えることです。体重を減らしても痛みが十分改善しない場合には、変形性関節症、脊椎疾患など、痛みの原因となる病変がないかを改めて評価し、必要に応じて画像検査、リハビリテーション、注射治療、手術を含めた整形外科治療を検討します。

肥満症治療の成功は「何kg痩せたか」だけではありません

体重やBMIは重要な指標ですが、それだけが治療のゴールではありません。「膝が痛くなくなった」「家から病院まで歩いて来られた」「地下鉄の階段を上がれるようになった」といった変化や、患者さんが診察室に笑顔で入ってきて「治療して良かった」と話してくださることも大切な治療成果です。

肥満症の診断に関係する健康障害

耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)

脂質異常症

高血圧

高尿酸血症・痛風

冠動脈疾患

脳梗塞・一過性脳虚血発作

非アルコール性脂肪性肝疾患

月経異常・女性不妊

閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群

運動器疾患(変形性関節症、変形性脊椎症など)

肥満関連腎臓病

この中に運動器疾患が含まれていることは整形外科にとって重要です。体重管理は血圧や血糖だけでなく、膝・腰を守る治療にも関係します。

よくある質問(FAQ)

Q1.BMIが25以上なら全員が肥満症ですか?

いいえ。BMI 25以上を肥満と判定しますが、肥満症は肥満に関連する健康障害や内臓脂肪蓄積などを評価して診断します。

Q2.BMIが低ければ体重管理は必要ありませんか?

BMIだけでは筋肉量や脂肪量など身体の中身までは分かりません。ただし医学的な肥満症の診断には定められた基準があります。

Q3.膝が痛くて運動できません。それでも減量できますか?

最初から強い運動を行う必要はありません。痛みの治療を行いながら、低負荷の運動や食事管理など、できるところから始めます。

Q4.薬を使えば運動しなくてもよいですか?

当院では薬だけで体重を減らすことを治療のゴールにはしていません。筋肉量を守り、最終的に身体を動かせる状態を目指します。

Q5.ウゴービやゼップバウンドは誰でも使えますか?

いいえ。肥満症治療薬には適応条件があり、医師が診断・評価したうえで使用を検討します。

Q6.マンジャロは肥満症治療薬ですか?

日本ではマンジャロは2型糖尿病について承認されています。肥満・減量目的での使用は適応外使用です。

Q7.体重が減れば膝や腰の痛みは必ず治りますか?

体重減少によって関節への負担軽減が期待できますが、構造的病変などが原因の場合は別の整形外科治療が必要になることがあります。

Q8.治療のゴールは標準体重ですか?

患者さんごとに目標は異なります。体重やBMIだけでなく、身体症状、筋肉量、活動量、生活の変化、患者さん自身の満足度などを総合して考えます。

まとめ|肥満症治療は「動ける身体」を取り戻す治療でもあります

肥満症の治療は、単に体重計の数字を下げることではありません。肥満に関連する健康障害を改善し、将来のリスクを減らし、生活の質を高めることが目的です。

整形外科では、膝や腰が痛くて運動できない患者さんを多く診療します。だからこそ、ごうだ整形外科では、体重管理、膝・腰の治療、低負荷からの運動、筋肉量の維持を一緒に考えます。

「痩せなさい」で終わらせず、まず動ける身体へ。そして最終的には、患者さんが笑顔で日常生活を送れる状態を目指します。

参考資料

・日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』

・厚生労働省「セマグルチド製剤(ウゴービ)最適使用推進ガイドライン(肥満症)」

・厚生労働省「チルゼパチド製剤(ゼップバウンド)最適使用推進ガイドライン(肥満症)」

監修者プロフィール

合田 猛俊

医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士 専門分野:疼痛治療・骨軟部腫瘍・手の外科

佐々木 拓郎

北7条ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター 専門分野:股関節・膝関節を中心とした下肢疾患

清藤 直樹

岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士 専門分野:人工関節・スポーツ整形・外傷

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自由診療による体重管理について【限定解除情報】

ごうだ整形外科では、患者さんの状態・治療目的・適応を確認したうえで、自由診療による体重管理を行う場合があります。自由診療は公的医療保険の対象外です。以下は、当院で行う自由診療による体重管理についての情報です。

治療内容

医師が問診・診察を行い、体重、BMI、既往歴、服薬状況、健康状態、治療目標などを確認します。必要に応じて身体組成や検査結果も確認し、食事・運動療法を基本として、医学的に適切と判断した場合に薬物療法を組み合わせます。使用薬剤、用量、治療継続・変更・終了は患者さんごとに医師が判断します。

治療期間・通院等の目安

治療期間には個人差があります。当院では半年~1年程度を一つの目安とし、原則として4週間ごとに体重、治療効果、副作用、運動状況などを確認しながら治療方針を見直します。目標体重、健康状態、副作用等によって治療期間は短くなる場合も長くなる場合もあります。

費用

自由診療のため健康保険は適用されません。マンジャロを自由診療で使用する場合の当院料金は、2.5mg・4週間分9,800円、5mg 19,800円、7.5mg 29,800円、10mg 39,800円、12.5mg 49,800円、15mg 59,800円です。診療料込み、送料1回1,700円、単月利用、継続縛りなしです。

ウゴービ・ゼップバウンド等を使用する場合の費用は、使用薬剤・用量によって異なります。公開時には当院の最新料金表をあわせてご確認ください。検査等を行う場合は、内容により別途費用が生じることがあります。

主なリスク・副作用

GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬では、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの消化器症状がみられることがあります。また、低血糖症状、急性膵炎などの重大な副作用が起こる可能性があります。薬剤ごとに副作用・注意事項は異なります。強い腹痛、繰り返す嘔吐、食事や水分が取れないなどの異常がある場合は使用を続けず、医療機関へ連絡・受診してください。

ウゴービ・ゼップバウンドについて

ウゴービ(セマグルチド)およびゼップバウンド(チルゼパチド)は、日本国内で一定の条件を満たす肥満症に対して承認された医薬品です。ただし、希望する方すべてが使用できるわけではなく、承認された効能・効果、用法・用量、最適使用推進ガイドライン等を踏まえて医師が適応を判断します。

マンジャロを肥満・減量目的で使用する場合

マンジャロ(チルゼパチド)は、日本国内では2型糖尿病を効能・効果として承認された医薬品です。肥満・減量目的で使用する場合は、承認された効能・効果とは異なる適応外使用となります。適応外使用では、承認された範囲での使用と同様の安全性・有効性が確認されているとは限りません。

入手経路

当院は国内製薬会社、卸会社より入手します。

国内で承認された同目的の医薬品の有無

国内には、一定の条件を満たす肥満症に対して承認された医薬品としてウゴービ、ゼップバウンド等があります。マンジャロを肥満・減量目的で適応外使用する場合には、国内承認された肥満症治療薬という選択肢が存在することを説明し、患者さんの状態に応じて治療方法を検討します。

諸外国における安全性等の情報

GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬は海外でも肥満症等の治療に使用されていますが、承認されている効能・効果、対象患者、用法・用量は国によって異なります。海外で承認されていることのみをもって、日本国内での適応外使用の安全性・有効性が保証されるものではありません。

医薬品副作用被害救済制度について

国内承認薬であっても、承認された効能・効果や用法・用量と異なる適応外使用を行った場合、医薬品副作用被害救済制度の救済給付の対象とならない可能性があります。

お問い合わせ

治療内容、費用、使用薬剤、副作用等について不明な点がある場合は、ごうだ整形外科へお問い合わせください。オンライン診療をご利用の方は、当院が案内する連絡方法からご相談ください。