腰痛と一緒に現れる症状|しびれ・発熱・排尿障害は要注意【後編】 突然の激痛・腹痛・夜間痛から考える危険な腰痛と受診の目安
腰痛と一緒に現れる症状|しびれ・発熱・排尿障害は要注意【後編】
突然の激痛・腹痛・夜間痛から考える危険な腰痛と受診の目安
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
腰痛の原因は、腰の骨、椎間板、関節、筋肉、神経だけとは限りません。
ときには血管や消化器、泌尿器、婦人科領域など、腰とは別の場所の病気が「腰痛」として現れることがあります。
特に注意したいのが、次のような症状です。
- 突然起こった非常に強い腰痛
- 強い腹痛を伴う腰痛
- 吐き気や冷や汗を伴う腰痛
- 夜間にも続く痛み
- 悪性腫瘍の治療歴がある方の腰痛
- 転倒後に始まった腰痛
前編では、しびれ、筋力低下、排尿・排便障害、発熱について解説しました。
後編では、腰以外の病気が原因となる腰痛、早めに受診してほしい腰痛、そしてごうだ整形外科が腰痛をどのように診断しているのかを解説します。
突然の激しい腰痛|「ぎっくり腰」と決めつけないことが大切です
突然、腰に激しい痛みが起こると、「ぎっくり腰になった」と思う方は多いと思います。
実際、急性腰痛症、いわゆる「ぎっくり腰」は、突然強い腰痛が起こる代表的な状態です。
ただし、突然痛くなった腰痛がすべてぎっくり腰とは限りません。
ごうだ整形外科では、突然の腰痛を診るとき、「何をしているときに痛くなったのか」を確認します。
ぎっくり腰では痛みが始まるきっかけがあることが多い
ぎっくり腰では、くしゃみをした、急に体を動かした、急に起き上がった、腰をひねった、物を持ち上げた、など何らかの動作をきっかけとして痛みが始まることがあります。
もちろん、すべてのぎっくり腰で明確なきっかけが分かるわけではありません。
しかし、「明らかなきっかけがないのに、突然ものすごく痛くなった」という場合には、腰の病気だけに限定せず原因を考える必要があります。
腰痛のように感じる血管の病気があります
突然の激しい腰痛で見逃してはいけないものに、大動脈の病気があります。
大動脈は、心臓から全身へ血液を送る非常に太い血管です。
大動脈解離などの重大な異常が起きた場合、胸や腹部だけでなく、背中や腰に強い痛みを感じることがあります。
診察では、痛みがどのように始まったか、血圧、全身状態、腹部の診察、必要に応じた画像検査などから判断していきます。
重要なのは、「腰が痛いから整形外科の病気」と最初から決めつけないことです。
症状によっては、速やかに他の診療科や救急医療につなげる必要があります。
腹痛を伴う腰痛では内臓の病気も考えます
腰痛と一緒に強い腹痛がある場合も注意が必要です。
腹部の病気でも、患者さん自身は「腰が痛い」と感じることがあります。
血管や消化器の病気の中には、腹部だけではなく腰や背中に痛みが現れるものがあります。
また女性では、卵巣捻転など婦人科領域の病気が腰痛や腹痛として現れることもあります。
そのため、強い腹痛を伴う腰痛では、腰だけを診察して終わるのではなく、必要に応じて腹部の状態も確認します。
腰痛と吐き気が一緒にある場合
吐き気や嘔吐を伴う場合には、消化管など腰以外の病気についても考える必要があります。
消化管穿孔や腸閉塞などでも、腹痛だけではなく腰や背中の痛みとして感じることがあります。
ただし、「吐き気+腰痛=消化器の病気」と単純に判断できるわけではありません。
強い痛みそのものによって吐き気が起こることもあります。
腹痛があるか、お腹が張っていないか、いつから症状が始まったか、食事との関係、排便の状態、全身状態なども含めて判断することが大切です。
冷や汗が出るほどの腰痛は軽視しないでください
非常に強い痛みが起こると、冷や汗が出ることがあります。
冷や汗だけを見て病名を診断することはできません。
しかし、腰痛とともに冷や汗が出ていて、じっとしていられないほど痛い場合には、単に痛み止めを飲んで自宅で様子を見るのではなく、原因を確認することが重要です。
特に、突然発症した強い痛み、腹痛、気分不良などを伴っている場合には、速やかな受診を考えてください。
夜間も腰が痛い場合は?
「夜になると腰が痛い」「寝ていても腰が痛くて目が覚める」という患者さんもいます。
夜間痛があるというだけで、特定の病気を診断することはできません。
寝る姿勢や寝返りなどによって、一般的な腰痛が夜間に強くなることもあります。
一方で、腫瘍などの病気でも夜間痛がみられる場合があります。
そのため、夜間痛についても、夜に痛いという一つの症状だけではなく、年齢、症状の経過、既往歴、診察所見などと組み合わせて考えることが重要です。
悪性腫瘍の治療歴がある方の腰痛
腰痛の患者さんを診察するときには、これまでにどのような病気をしたことがあるのかも重要な情報です。
特に、悪性腫瘍の治療歴がある場合には、骨への転移などの可能性を念頭に置いて診察します。
「がんの治療から何年も経っているから、今回の腰痛とは関係ない」とは必ずしも言い切れません。
長期間経過してから骨への転移が確認される可能性もあります。
もちろん、悪性腫瘍の治療歴がある方が腰痛になったからといって、すべてが転移というわけではありません。
大切なのは、過去の病歴を医師にきちんと伝えることです。
転倒後の腰痛では圧迫骨折を考えます
転倒したあとに腰痛が始まった場合には、外傷による骨折を考える必要があります。
特に高齢の方や骨粗鬆症がある方では、腰椎圧迫骨折などに注意します。
強く転倒していなくても骨折する場合があります。
また、「転んだだけだから」「歩けるから骨折ではない」とは限りません。
転倒後から腰痛が続いている場合には、必要に応じて画像検査を行い、骨折がないか確認します。
腰椎圧迫骨折については、関連記事「腰椎圧迫骨折とは?」で詳しく解説しています。
どのくらい痛ければ病院へ行くべき?
これは患者さんからよく聞かれる質問です。
しかし、痛みの強さだけで受診の必要性を決めることは難しいと考えています。
痛みの感じ方には大きな個人差があります。
同じ程度の病変があったとしても、「ものすごく痛い」と感じる方もいれば、「これくらいなら我慢できる」と感じる方もいます。
そのため、ごうだ整形外科では痛みの点数だけではなく、「その痛みによって日常生活にどの程度支障が出ているか」を大切にしています。
日常生活に支障があるなら受診を考えてください
たとえば、痛くて仕事ができない、家事ができない、歩くのがつらい、起き上がるのが難しい、睡眠に支障が出ている、普段の生活ができなくなっている、という場合です。
痛みの程度を他の人と比較する必要はありません。
自分の日常生活に支障が出ているかどうかを受診の一つの目安にしてください。
すぐに医療機関へ相談してほしい腰痛
腰痛の中には、様子を見ずに速やかな受診が必要なものがあります。
症状 | 注意する理由 |
尿が出にくい、尿意が分からないなど新しい排尿異常 | 高度な神経圧迫による膀胱直腸障害の可能性 |
排便機能の異常 | 膀胱直腸障害の可能性 |
急に足の力が入らなくなった | 神経の強い障害や麻痺の可能性 |
股の間や肛門周囲の感覚がおかしい | 仙骨領域の神経障害の可能性 |
動けないほどの強い腰痛 | 重い脊椎疾患や腰以外の疾患を含めた評価が必要 |
腰痛と強い発熱 | 脊椎感染症などの可能性 |
突然の激痛と腹痛・全身状態の変化 | 血管・内臓疾患などの可能性 |
転倒後から続く強い腰痛 | 圧迫骨折などの可能性 |
この表は病名を自己診断するためのものではありません。
「いつもの腰痛とは違う」と感じたときに、受診を判断するための目安として考えてください。
長く続く腰痛も「慣れているから大丈夫」とは限りません
緊急性の高い腰痛だけが、病院を受診すべき腰痛ではありません。
「何年も腰が痛い」「強い痛みではないけれど、ずっと続いている」という患者さんもいます。
長期間続いていると、「もう年齢のせいだろう」「昔からだから仕方がない」と考えてしまうことがあります。
しかし、長く続いていることと、原因を確認する必要がないことは別です。
一度も十分な評価を受けていない場合や、以前と症状が変わってきた場合には、原因を調べる意味があります。
「レントゲンで異常なし」なら腰は正常?
腰痛がある患者さんから、「以前レントゲンを撮って、骨には異常がないと言われました」と聞くことがあります。
しかし、レントゲンで大きな異常が見つからなかったからといって、「痛みの原因は何もない」とは限りません。
レントゲンとMRIでは得られる情報が異なります。
また、現在の画像検査や診察を行っても、痛みの原因を一つに断定できない腰痛もあります。
「原因を特定できない」と「何ともない」は違います
これは、ごうだ整形外科が腰痛を診療するときに大切にしている考え方です。
患者さんは実際に痛みを感じています。
それに対して、「検査では異常がありません。大丈夫です」だけで終わってしまったら、「私はこんなに痛いのに、何が大丈夫なのだろう?」と思うのは当然です。
検査をして「大丈夫」と言えることの一つは、現時点の診察や検査では、重大な病気が隠れている可能性が低いという意味です。
これは、「痛みが存在しない」という意味ではありません。
原因を断定できなくても、検査する意味があります
腰痛では、診察や画像検査を行っても、痛みの原因を完全には特定できない場合があります。
それでも検査には意味があります。
骨折、椎間板ヘルニア、高度な神経圧迫、感染症、腫瘍など重大な病気が隠れていないかを確認することができます。
重大な病気が否定できることは、その後の治療方針を考えるうえでも重要です。
ごうだ整形外科では腰痛をどう診ている?
腰痛の原因を考えるためには、MRIだけを見ればよいわけではありません。
ごうだ整形外科では、まず問診で、どこが痛いのか、いつから痛いのか、何をしたときに始まったのか、安静にしていても痛いのか、立っていると痛いのか、歩くと痛いのか、しびれがあるか、筋力低下がないか、発熱がないか、排尿・排便の異常がないか、などを確認します。
そして、実際に体を診察します。
痛む場所を触り、圧痛を確認し、必要に応じて筋力、感覚、膝蓋腱反射やアキレス腱反射などの神経学的所見を調べます。
これらを組み合わせ、「どこに原因がある可能性が高いのか」を考えていきます。
MRIは症状と診察所見を踏まえて判断します
神経症状がある場合や、診察から椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが疑われる場合には、MRIが重要な検査になります。
MRIでは、レントゲンでは十分に確認できない椎間板や神経、脊柱管などを詳しく評価できます。
一方で、患者さんの状態、来院時間、緊急性などによって、すべての患者さんが同じ順序で検査・治療を受けるわけではありません。
強い痛みで動くことが難しい場合などには、診察所見から痛みの原因となっている神経を推定し、症状に応じて神経ブロックなどの治療を検討することもあります。
その後の経過を確認しながらMRIを行う場合もあります。
原因がはっきりしなくても治療は終わりではありません
検査をして重大な病気が見つからなかった。しかし、腰はまだ痛い。このような患者さんは少なくありません。
その場合、「原因が分からないから、もう治療することはありません」とは考えません。
次に考えるのは、「どうすれば痛みを抑え、日常生活に支障のない状態に近づけられるか」ということです。
薬を飲み続けることだけが腰痛治療ではありません
腰痛の治療では、必要に応じて薬を使用します。
しかし、痛みがあるからといって、長期間にわたり薬だけを飲み続けることが最終的な目標ではありません。
ごうだ整形外科では、可能であれば、薬をたくさん使わなくても、痛みが日常生活に支障を与えない状態を目指したいと考えています。
そのためには、患者さんの状態に応じて、薬物療法だけではなく、運動療法やリハビリテーションなどを組み合わせることが重要です。
慢性的な腰痛では「自分で体を動かす」ことも大切です
慢性的な腰痛では、マッサージなどによって一時的に筋肉がほぐれ、楽になることがあります。
一方で、ごうだ整形外科では、慢性的な痛みに対して自分自身で筋肉を動かすことも重視しています。
当院では、理学療法士による評価や運動指導などを行い、患者さんの状態に応じて体を動かしていくことを大切にしています。
運動を続けることは、筋力を保つだけではありません。
体重管理や体力の維持にもつながり、日常生活そのものを改善していくきっかけになる可能性があります。
目標は単に「薬で痛みを感じなくすること」だけではありません。
「できるだけ薬に頼らず、痛みによって生活が制限されない状態に近づけるにはどうすればよいか」を考えていくことも、腰痛治療の大切な部分です。
まとめ|「腰痛だから大丈夫」と自己判断しないでください
腰痛の多くは、生命に関わる病気によって起こるものではありません。
しかし、腰痛という症状の中には、神経の強い圧迫、感染症、骨折、血管疾患、内臓疾患、腫瘍などが隠れていることがあります。
重要なのは、痛みの強さだけで判断しないことです。
腰痛と一緒に、しびれ、筋力低下、排尿・排便障害、発熱、強い腹痛、突然の激痛、いつもと違う症状などがある場合には注意してください。
また、緊急性の高い症状がなくても、腰痛によって仕事や家事など日常生活に支障が出ているのであれば、受診を考える一つの目安になります。
そして、検査で原因を完全に特定できなかったとしても、「原因が分からない=何ともない」ではありません。
重大な病気が隠れていないことを確認したうえで、どうすれば痛みを抑え、日常生活に支障の少ない状態に近づけられるかを考えていくことが大切です。
ごうだ整形外科では、腰痛という症状だけを見るのではなく、その背景に何があるのかを考え、診断と治療につなげていきます。
FAQ
Q1.突然腰が激しく痛くなりました。ぎっくり腰でしょうか?
ぎっくり腰では、急な動作、起き上がり、くしゃみ、物を持ち上げるなどをきっかけに強い腰痛が起こることがあります。ただし、突然の激しい腰痛がすべてぎっくり腰とは限りません。明確なきっかけがない激痛や、腹痛、冷や汗、全身状態の変化などを伴う場合には、腰以外の病気も考える必要があります。
Q2.腰痛と腹痛が同時にあります。整形外科の病気でしょうか?
腰痛と腹痛が同時に起こる病気には、整形外科領域以外のものもあります。血管、消化器、泌尿器、婦人科領域などの病気が腰や背中の痛みとして現れる場合があります。強い腹痛や突然の症状がある場合には、自己判断せず医療機関を受診してください。
Q3.夜に腰が痛いのは危険ですか?
夜間痛があるだけで重大な病気と判断することはできません。寝る姿勢や寝返りによって一般的な腰痛が強くなることもあります。一方で、腫瘍などでも夜間痛がみられる場合があるため、長く続く場合や他の症状を伴う場合には診察を受けることをおすすめします。
Q4.がんの治療から何年も経っています。腰痛と関係しますか?
多くの腰痛はがんとは関係ありません。ただし、悪性腫瘍の治療歴がある方では、時間が経過していても、その既往は診断上重要な情報です。受診時には過去の病気や治療歴を医師に伝えてください。
Q5.レントゲンで異常なしと言われましたが、まだ腰が痛いです。
レントゲンで大きな異常が見つからなくても、腰痛の原因をすべて否定できるわけではありません。症状によってはMRIなど別の検査が必要になることがあります。また、現在の検査では原因を一つに特定できない腰痛もあります。重要なのは、重大な病気が隠れていないかを確認し、そのうえで症状を改善する方法を考えることです。
Q6.腰痛はどのくらい痛くなったら受診すべきですか?
痛みの感じ方には個人差があるため、痛みの強さだけで判断することは難しいです。一つの目安は、仕事、家事、歩行、睡眠など日常生活に支障が出ているかどうかです。また、麻痺、排尿・排便障害、発熱、突然の激痛などを伴う場合には、痛みの程度だけで判断せず速やかな受診が必要になることがあります。
Q7.原因が分からない腰痛でも治療できますか?
原因を完全に特定できない腰痛はあります。しかし、原因を断定できないことと、治療することがないということは同じではありません。重大な病気が隠れていないことを確認したうえで、薬物療法、運動療法、リハビリテーションなどを組み合わせ、日常生活に支障の少ない状態を目指していきます。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長。整形外科専門医・医学博士。ペインクリニックを専門とし、神経ブロック治療や脊椎疾患の診療を数多く行っています。画像だけでは判断せず、診察所見と症状を重視した診療を心掛け、一人ひとりに合わせた治療を提案しています。
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科院長。整形外科専門医。膝関節・股関節疾患、スポーツ整形外科を専門とし、保存療法から手術後のリハビリまで幅広く診療しています。
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科院長。整形外科専門医。スポーツ整形外科を専門とし、成長期のスポーツ障害から一般整形外科まで幅広く診療しています。
記事情報
記事番号:L-011
記事名:腰痛と一緒に現れる症状|しびれ・発熱・排尿障害は要注意【後編】
シリーズ:腰痛ナビゲーション・症状シリーズ
監修:合田 猛俊・佐々木 拓郎・清藤 直樹
公開日:
更新日:
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