L-014 腰痛の検査|レントゲン・MRI・CTで何がわかる?

【後編】CTはいつ必要?どこまで検査すればいい?

監修/合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

前編ではレントゲン、中編ではMRIについて解説しました。

後編では、CTとMRIの違い、どこまで画像検査を行うべきか、ごうだ整形外科でMRIをどのように診断や神経ブロックへつなげているのか、さらに他院で撮影したMRIをどう扱うのかについて解説します。

画像検査は、多ければ多いほどよいわけではありません。大切なのは、患者さんの症状・診察所見・治療方針に合わせて、必要な検査を適切に選ぶことです。

23.CTとMRIは何が違う?

MRIは強い磁場と電波を利用して画像を作るのに対し、CTはX線を利用して身体の断面画像を作ります。

比較

MRI

CT

主な原理

磁場と電波

X線

放射線被ばく

通常なし

あり

得意なもの

神経、椎間板、靱帯、筋肉、骨髄など

骨の細かな形、肺・腹部・血管など

撮影時間

比較的長い

比較的短い

腰痛診療では、椎間板や神経の状態を確認する目的ではMRIが中心になります。一方、CTは骨の細かな構造を確認する場合や、血管・内臓の評価が必要な場合などに有用です。

24.腰痛診療でCTが特に役立つのはどんなとき?

ごうだ整形外科では、脊椎手術を中心に行っている施設ではないため、一般的な腰痛診療でCTを使用する場面は多くありません。

一方、脊椎手術を行う場合にはCTが重要になることがあります。例えば椎弓根スクリューを使用する手術では、

  • スクリューを入れる方向や角度
  • 椎弓根の幅や形
  • 骨の細かな構造
  • 手術計画に必要な骨性情報

などを詳しく評価するため、CTが有用です。

骨折や腰椎分離症についてもMRIで評価できる場合が多く、保存治療を中心とする日常診療では、必ずしもCTを追加する必要はありません。

CTは『MRIより詳しい検査』という単純な位置づけではなく、目的が異なる検査です。

25.CTを「念のため」に繰り返さない理由

CTはX線を使用するため、放射線被ばくがあります。

通常の単純レントゲンと比べてCTは一般に被ばく量が多くなるため、医学的な必要性を考えずに繰り返す検査ではありません。

患者さんが詳しい検査を希望されることはありますが、画像検査は『たくさん撮れば安心』というものではありません。

CTを行う場合には、CTによって新しい情報が得られ、その情報が診断や治療方針に役立つかを考えることが大切です。

26.画像検査はどこまで行えば十分?

これは患者さんによって答えが異なる難しい問題です。

患者さんの中には、できるだけ医療費を抑えて単純レントゲンを中心に診断してほしい方もいます。一方で、MRIまで行って現在の状態を詳しく確認したいという方もいます。

当院では、検査の必要性を大きく二つに分けて考えています。

  • 医学的に診断・治療を行うための必要性
  • 患者さんが現在の病態を理解し、不安を減らすための必要性

もちろん、患者さんが希望すれば何でも検査するということではありません。まず医学的な妥当性を考え、そのうえで患者さんが何を心配し、どこまで確認したいと考えているのかも診療の中で相談します。

27.MRIは「病気を見つける」だけでなく「心配な病気がないことを確認する」検査でもあります

腰痛で受診される患者さんの中には、

  • がんが隠れているのではないか
  • 骨折しているのではないか
  • 大きな椎間板ヘルニアがあるのではないか
  • このまま歩けなくなるのではないか

と、非常に強い不安を持っている方もいます。

MRIを行い、心配していたような重大な病変が確認されなければ、それ自体が重要な情報です。

そのうえで、『大きな神経圧迫や骨折などは確認されないため、現在は筋肉や姿勢など別の要因を考えて治療していきましょう』と説明することで、患者さんが安心して次の治療へ進めることがあります。

画像検査には、病気を見つけるだけでなく、重大な病気を除外するという役割もあります。

28.ごうだ整形外科では、必要なら初診当日のMRIを重視します

ごうだ整形外科では、できるだけ患者さんが受診した日に診断し、可能であればその日のうちに治療方針まで決めることを大切にしています。

そのため、診察所見からMRIが必要と判断した場合には、可能な範囲で初診当日にMRIを行うことを基本的な考え方としています。

ただし、MRIは撮影に一定の時間がかかり、1日に撮影できる人数にも限りがあります。

そのため、強い痛みがあり治療を急ぐ場合などには、まず診察所見をもとに治療を先行し、後日MRIを行うこともあります。

29.治療を先に行って、後からMRIを撮る意味

MRIは、必ずしも『最初に病名をつけるためだけの検査』ではありません。

診察所見からある程度病態を推測し、先に治療を行ったあとでMRIを撮影する場合には、

  • 最初に考えた診断が妥当だったか
  • 治療した場所と画像上の病変が一致しているか
  • ほかに病変が隠れていないか

を確認する意味があります。

つまりMRIは、臨床診断を画像で確認するために使うこともあります。

30.医学的にMRIの必要性が高いのはどんな場合?

患者さんの希望とは別に、医学的な理由からMRIの必要性が非常に高くなる状態があります。

  • 明らかな麻痺・筋力低下がある
  • 膀胱直腸障害が疑われる
  • 強い神経症状があるが、どの神経が原因か診察だけでは判断しにくい
  • 神経ブロックなどの治療前に責任病変を確認する必要がある

特に麻痺や膀胱直腸障害がある場合には、神経がどこでどの程度圧迫されているのかを早く確認する必要があります。

このような場合には、『詳しく見たいからMRIを撮る』のではなく、今後の治療方針を決めるためにMRIが重要になります。

31.神経の症状は、教科書どおり一対一ではありません

腰から足へ向かう神経には、L4、L5、S1などがあります。

教科書では、それぞれの神経に対応する痛み・しびれ・筋力低下の範囲が示されています。しかし実際の人体は、コンピューターの配線のように『ここが悪ければ必ずここだけに症状が出る』という一対一対応ではありません。

神経支配には重なり(オーバーラップ)があり、個人差もあります。

例えば一般的な神経支配の分布だけを見ればS1を考えるような大腿後面の症状でも、実際の診察ではL5が関与している患者さんがいることがあります。

そのため当院では、

  • 患者さんが感じる痛み・しびれの場所
  • 筋力検査
  • 感覚検査
  • 腱反射
  • MRI画像

を組み合わせ、どの神経が実際の症状に関係しているのかを判断します。

32.MRIは「どこを治療するか」を決める検査でもあります

ごうだ整形外科には、強い神経痛に対して神経ブロックで痛みを軽減してほしいという患者さんも受診されます。

神経ブロックでは、原因となっている神経を正しく選ぶことが重要です。

診察ではL5神経の症状に見えていても、実際にはL4やS1が関係している可能性がある場合、診察だけで責任神経を断定することはできません。

異なる神経にブロックを行えば、十分な効果が得られない可能性があります。

そのため、神経症状の部位がはっきりしない場合や、ブロック治療を行う場合には、MRIで神経圧迫の場所を確認することが非常に重要です。

MRIは病名をつけるためだけではなく、『どこを治療するのか』を決めるための検査でもあります。

33.他院で撮ったMRIは撮り直す必要がありますか?

最近は、他院で撮影したMRI画像を持参して受診される患者さんも増えています。

セカンドオピニオンを希望される場合や、前の医療機関での説明・治療に納得できず受診される場合などです。

当院では、他院で撮影されたMRIだからという理由だけで、必ず撮り直すことはありません。

一つの目安として、

  • おおむね1年以内に撮影された画像
  • 現在の症状とMRI所見に大きな食い違いがない
  • その後、症状が大きく変化していない

場合には、持参された画像を参考に診断・治療を開始することがあります。

34.古いMRIでは現在の状態を表していないことがあります

一方、数年前に撮影したMRIでは、現在の状態が大きく変化している可能性があります。

例えば椎間板ヘルニアは時間の経過とともに縮小・吸収することがあり、数年前にあったヘルニアが現在も同じ状態で残っているとは限りません。

反対に、その後に新しい病変が生じている可能性もあります。

そのため、古いMRIしかない場合や、以前とは症状の場所・強さが変わっている場合には、新しいMRIを検討します。

35.画像は客観的でも「どう読むか」は重要です

MRI画像そのものは、患者さんの身体を撮影した客観的な情報です。

しかし、

  • 画像のどこに注目するか
  • 何を異常と考えるか
  • 患者さんの症状とどの所見を結びつけるか
  • 写っている異常が本当に痛みの原因なのか

という判断には、診察所見と画像を組み合わせる必要があります。

同じMRI画像であっても、画像だけを見て病名を決めるのではなく、その患者さんの症状と合わせて評価することが重要です。

ごうだ整形外科では、画像所見だけではなく、患者さんの症状・身体診察・治療への反応まで含めて病態を考えます。

ごうだ整形外科の画像検査の考え方

画像検査は、多ければ多いほど良いわけではありません。

レントゲン、MRI、CTには、それぞれ得意なことと不得意なことがあります。

当院では、

  • 患者さんの症状
  • 身体診察・神経所見
  • 医学的に必要な情報
  • 予定している治療
  • 患者さんが抱えている不安や希望

を合わせて、必要な検査を考えます。

そして画像検査の目的は、単に『異常を探すこと』ではありません。

重大な病気が隠れていないことを確認し、患者さんが現在の病態を理解し、適切な治療へ進むために画像を使うことが重要です。

レントゲン・MRI・CTのどれが一番優れているかではなく、『今、この患者さんに何の情報が必要なのか』によって検査を選択します。

腰痛の画像検査についてよくある質問

Q1.腰痛ならMRIまで撮った方が安心ですか?

すべての腰痛でMRIが必要なわけではありません。問診、身体診察、レントゲンなどからMRIで確認すべき病態があるかを考えます。ただし、麻痺や強い神経症状などMRIの必要性が高い状態もあります。

Q2.CTとMRIはどちらが詳しい検査ですか?

どちらが上というものではなく、目的が異なります。MRIは神経・椎間板・靱帯・筋肉・骨髄などの評価に適し、CTは骨の細かな構造や、目的によっては肺・腹部・血管などの評価に有用です。

Q3.CTは何回受けても大丈夫ですか?

CTはX線を使用するため放射線被ばくがあります。必要な検査を避けるべきではありませんが、『念のため』という理由だけで繰り返すものではありません。医学的な必要性を考えて判断します。

Q4.MRIを撮る前に治療をしても大丈夫ですか?

症状や診察所見によっては、強い痛みを先に軽減するため治療を行い、その後MRIで病態を確認する場合があります。特に強い痛みでMRIの姿勢を保てない場合には、治療を先行することがあります。

Q5.神経ブロックの前にMRIは必要ですか?

どの神経が症状の原因なのか診察だけでは判断しにくい場合には、MRIで圧迫部位を確認することが重要です。異なる神経を治療すると十分な効果が得られない可能性があるためです。

Q6.他院で撮ったMRIを持参してもいいですか?

はい。現在の症状と画像所見が大きく変わっていなければ、持参されたMRIを参考に診断・治療できる場合があります。他院の画像だからという理由だけで必ず撮り直すわけではありません。

Q7.1年前のMRIはまだ使えますか?

おおむね1年以内で、現在の症状と画像に大きな食い違いがなければ参考にできる場合があります。ただし症状が変化している場合や、病態が変わっている可能性がある場合には再撮影を検討します。

Q8.MRIで大きな異常がなければ腰痛の原因はないのでしょうか?

いいえ。画像所見と痛みの強さは必ずしも一致しません。MRIで重大な病変が確認されなくても、筋肉、姿勢、関節などが症状に関係していることがあります。画像と身体診察を合わせて判断することが重要です。

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監修者

合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長

佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長

清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長

記事情報

記事番号:L-014

記事名:腰痛の検査|レントゲン・MRI・CTで何がわかる?

掲載区分:後編:CT・検査選択・当院の画像診断方針

シリーズ:ごうだ整形外科の腰痛ナビゲーション

監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

公開日:未定

更新日:未定