K-001 膝のどこが痛い?|痛む場所から考える原因

【後編】膝の裏・膝全体の痛み|膝以外が原因のこともある

監修

合田 猛俊

佐々木 拓郎

清藤 直樹

前編では、ごうだ整形外科で実際に行っている膝の診察の流れと、膝の前・内側・外側が痛む場合に考える原因について解説しました。

しかし、膝痛の患者さんの中には、「膝の裏が痛い」「膝全体が痛い」「どこが痛いのか、自分でもよく分からない」と訴える方もいます。

このような場合には、膝関節だけを見ていては原因にたどり着けないことがあります。

腰からの神経症状、股関節からの関連痛、関節リウマチなど、膝以外の病気が膝痛として現れることもあるからです。

後編では、膝の裏側や膝全体の痛みをどのように考えるのか、そしてごうだ整形外科では膝痛をどのように診断しているのかを解説します。

18.膝の裏が痛い|若い方では半月板後方も確認します

「膝の裏が痛い」という訴えにも、いくつもの原因があります。

比較的若く、膝の見た目に明らかな変形がない患者さんでは、まず半月板の後方部分に問題がないかを確認します。

半月板は膝の前方だけではなく、関節の後方まで広がっています。

そのため後方部分に損傷があると、深く膝を曲げる、しゃがむ、ひねる、曲げた状態から伸ばす、といった動作で膝の奥から後方に痛みが出ることがあります。

ただし、後方痛だけで半月板損傷と診断することはできません。圧痛、動作、徒手検査、年齢、外傷歴、画像所見などを合わせて判断します。

19.膝の裏が腫れている|ベーカー嚢腫

膝の裏が腫れて、突っ張るような症状がある場合には、ベーカー嚢腫(膝窩嚢腫)を考えます。

ベーカー嚢腫は、膝関節内で増えた関節液が膝の後方にある滑液包へたまり、袋状に膨らんだものです。

成人のベーカー嚢腫は、単独で起こるというより、変形性膝関節症や半月板損傷などの関節内病変に伴ってみられることが多いことが知られています。

そのため、「ベーカー嚢腫があるから、嚢腫だけを治せばよい」とは限りません。

なぜ関節液が増えているのか、その原因となっている膝関節内の病態も確認する必要があります。

20.伸びない膝では、後ろ側が突っ張って痛むことがあります

中年以降で、「膝の後ろが突っ張る」「膝が伸びきらない」「膝全体が重い」という患者さんでは、まず膝が完全に伸びるかを確認します。

膝の伸展制限が長く続くと、膝後方の関節包などが硬くなり、膝の裏側に突っ張るような痛みを感じることがあります。

この場合、後ろ側だけに問題があるとは限りません。背景に、変形性膝関節症、半月板の変性・損傷、関節水腫、関節全体の拘縮などが重なっていることがあります。

膝の裏側の痛みは、一つの病気だけで説明できず、複数の病態が重なっていることがあります。

21.筋肉や腱から膝裏が痛むこともあります

膝の裏には、関節だけでなく複数の筋肉や腱があります。例えば、ハムストリングを構成する大腿二頭筋などです。

筋・腱由来の痛みでは、筋肉に力を入れる、膝を曲げる、スポーツ動作をする、患部を押す、といったときに痛みが再現されることがあります。

関節の内部が原因なのか、筋肉や腱が原因なのか。診察では、どの動作で痛みが出るかも重要な情報になります。

22.急にふくらはぎまで腫れた場合は、膝だけの問題とは限りません

ベーカー嚢腫が破裂すると、膝裏からふくらはぎにかけて急に痛みや腫れが出ることがあります。

この症状は、深部静脈血栓症(DVT)などと似ることがあります。医学的にも、破裂したベーカー嚢腫は急な膝窩・下腿痛や腫脹を起こし、DVTとの鑑別が必要とされています。

そのため、急にふくらはぎが腫れた、強い痛みが出た、左右差が明らか、息苦しさなど全身症状を伴う、といった場合には、自己判断で「膝の水だろう」と考えず、医療機関で評価を受けることが大切です。

23.「膝全体が痛い」という患者さんもいます

膝痛の患者さんに「どこが痛いですか?」と聞いても、膝全体を手で囲むように示す方がいます。

患者さん自身も、どこから痛みが出ているのかはっきり分からないことがあります。

この場合は、特に問診が重要になります。

動かすと痛いのか、安静にしていても痛いのか、転んだりぶつけたりしていないか、急に痛くなったのか、最近発熱がなかったか、痛いのは片膝だけか、反対側の膝や他の関節も痛くないか、といったことを確認します。

24.両膝や複数の関節が痛い場合は全身性疾患も考えます

膝だけを痛がっているのか、それとも複数の関節に症状があるのかは重要です。

例えば、左右両方の膝が腫れる、手指や足趾など他の関節にも痛みがある、朝に強いこわばりがある、発熱や全身倦怠感がある、といった場合には、関節リウマチなど炎症性疾患も鑑別します。

関節リウマチは手足の小関節に発症することが多いものの、大きな関節にも症状が出ることがあり、左右対称に複数関節が腫れることは重要な特徴の一つです。

「膝が痛い=膝だけの病気」ではありません。

25.腰からの神経症状が「膝が痛い」と感じられることがあります

膝を詳しく触っても明確な圧痛がなく、「この辺全部が痛い」と太ももから下腿まで広い範囲を示す患者さんでは、腰からの神経症状も考えます。

ごうだ整形外科では、患者さんに「実際に痛いところを手で触って示してください」とお願いすることがあります。

関節裂隙の一点ではなく、膝の周囲から下腿へ広く痛みが続いている場合には、神経由来の痛みを考える手がかりになります。

26.L4・L5・S1は「痛む場所だけ」で決めてはいけません

一般的な神経学では、L3・L4では大腿前面から膝周囲、L5では下肢外側から足背方向、S1では大腿・下腿後面から足外側に感覚症状が出ることがあります。

ただし、神経根性疼痛は教科書どおりの皮膚分節(デルマトーム)に必ず一致するわけではありません。

特にL4・L5・S1を「痛みの場所だけ」で正確に区別することは難しく、神経根を判断するときは、痛みだけでなく、しびれの範囲、筋力、腱反射などを組み合わせて評価する必要があります。

そのため、「外側が痛いから必ずL5」というような断定はしません。

27.股関節が原因で膝が痛むこともあります

膝そのものに明らかな異常が見つからない場合には、股関節も確認する必要があります。

股関節の病気では、鼠径部や大腿前面に痛みが出ることが多く、股関節の動きが悪くなっていることがあります。

学術的には、股関節由来の痛みが膝まで、あるいは膝より遠位まで放散することもあることが報告されています。

したがって、膝を診ても痛みの原因がはっきりしない、股関節の動きが悪い、鼠径部や大腿にも痛みがある、といった場合には股関節由来の関連痛も考えます。

ここは、一般整形外科として「膝だけを見て診断を終わらせない」ことが重要です。

28.膝の不安定性も確認します

膝の診察では圧痛や可動域だけでなく、不安定性の評価も重要です。

確認するのは、内反・外反方向の不安定性、前後方向の不安定性などです。

特にスポーツ中の外傷や転倒後では、前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯などの損傷がないかを考えます。

「痛い場所」だけではなく、「膝がぐらつく」「抜ける感じがする」「踏ん張れない」という症状も診断の重要な手がかりです。

29.診察とレントゲンを照らし合わせて原因を考えます

ごうだ整形外科では、膝痛の患者さんは看護師による事前問診のあと、症状に応じて診察前にレントゲン撮影を行っていることがあります。

しかし、レントゲンだけを見て診断を決めるわけではありません。

患者さんが診察室へ入ってくるときの歩き方を見て、問診を確認し、不足している情報を追加で聞きます。

その後、視診、膝蓋骨、水腫、可動域、圧痛、不安定性などを確認し、診察結果とレントゲンを照らし合わせます。

明らかな変形性膝関節症があり、診察所見とも一致する場合には、患者さんにも実際にレントゲンを見てもらいながら説明します。

30.「年を取ったから仕方がない」とは説明しません

変形性膝関節症の患者さんにレントゲンを見せると、「これは年齢のせいですよね」「年を取ったから仕方がないですよね」と患者さん自身から言われることがあります。

しかし、ごうだ整形外科では、基本的に「年を取ったから仕方がありません」という説明はしません。

確かに加齢は変形性膝関節症の重要なリスク因子です。しかし、変形性膝関節症には、年齢、体重、過去の外傷、膝のアライメント、遺伝的要因、長年の負荷など、複数の要因が関係します。

つまり、「年を取れば全員同じように膝が変形する」わけではありません。

31.「今まで頑張って働いてきた膝」と考えます

変形した膝を見て、「もう年だから仕方がない」と諦めてしまう必要はありません。

ごうだ整形外科では、患者さんに「この膝は、今まで一生懸命働いてきた結果として、こういう変化が出てきたんですよ」と説明することがあります。

長年身体を支え、仕事をし、歩き、生活してきた膝です。

変形があることと、「治療しても意味がない」ことは同じではありません。

変形そのものを完全に元へ戻すことが難しくても、痛みを減らす、動きを改善する、筋力を維持する、歩きやすくする、日常生活を楽にするためにできる治療はあります。

年齢のせいにして終わらせるのではなく、今ある痛みをどう減らすかを一緒に考えることが大切です。

K-001まとめ|「どこが痛いか」は診断の入口です

膝痛を診察するとき、痛む場所は非常に重要です。

しかし、「この場所が痛い=この病気」という単純なものではありません。

膝の前・内側・外側・後ろ側には、それぞれ多くの組織があります。さらに膝全体が痛い場合には、変形性膝関節症、半月板損傷、関節拘縮、関節リウマチなどの全身性疾患、腰からの神経症状、股関節由来の関連痛なども考える必要があります。

ごうだ整形外科では、痛い場所だけを見るのではなく、歩き方、問診、視診、触診、可動域、徒手検査・不安定性、画像を組み合わせて原因を考えます。

患者さん自身が「どの場所が、どんな動作で痛いのか」を医師に伝えることは、診断の非常に大切な手がかりになります。

膝の痛む場所についてよくある質問

Q1.膝の内側が痛ければ、変形性膝関節症ですか?

必ずしもそうではありません。内側半月板、内側側副靱帯、鵞足部、軟骨下骨なども原因になります。年齢、外傷歴、圧痛の場所、レントゲンなどを合わせて診断します。

Q2.膝の裏が痛ければベーカー嚢腫ですか?

ベーカー嚢腫は原因の一つですが、半月板後方の病変、関節拘縮、筋・腱の問題などでも膝裏は痛くなります。

Q3.ベーカー嚢腫があると半月板も悪いのですか?

成人のベーカー嚢腫は、半月板損傷や変形性膝関節症などの関節内病変を伴うことが多いため、嚢腫だけでなく膝関節内も確認します。

Q4.レントゲンが正常なら膝に異常はありませんか?

そうとは限りません。半月板・靱帯・軟骨などは単純レントゲンだけでは十分評価できません。また、軟骨下脆弱性骨折などは初期レントゲンで明らかでない場合もあります。

Q5.腰が原因で膝が痛くなることはありますか?

あります。腰椎神経根の症状によって膝周囲や下肢に痛み・しびれを感じることがあります。ただし、痛む位置だけで神経根を特定することはできません。

Q6.股関節の病気で膝が痛くなることはありますか?

あります。特に股関節の変形性関節症などでは、膝に関連痛を感じることがあります。膝の診察だけで原因が説明できない場合には、股関節も確認します。

Q7.両膝が痛い場合は何を考えますか?

変形性膝関節症だけでなく、他の関節にも腫れや痛みがある場合には関節リウマチなど炎症性疾患も考えます。

Q8.変形性膝関節症は年齢のせいなので治療しても無駄ですか?

いいえ。年齢は一つのリスク因子ですが、変形性膝関節症には体重、過去の外傷、アライメントなど複数の要因が関係します。変形があっても、痛みや機能を改善するための治療はあります。

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医学的確認について

本記事は、合田医師の一般整形外科診療における臨床経験・診察手順を一次情報として構成しています。膝専門医としての専門的見解を示すものではありません。

診断、神経症状、ベーカー嚢腫、変形性膝関節症、関連痛などの医学的記述については、整形外科・リウマチ領域の標準的な医学文献・学術資料と照合しています。

特に、神経根症状をL4・L5・S1の痛みの場所だけで断定しないこと、股関節疾患が膝痛として現れることがあること、ベーカー嚢腫は半月板損傷だけでなく変形性関節症など複数の関節内病変に関連することを、学術的知見に沿って記載しています。

主な参考文献・学術資料

  • Baker’s Cyst: Diagnostic and Surgical Considerations. Sports Health. 2015.
  • Posterior Knee Pain. Current Reviews in Musculoskeletal Medicine. 2010.
  • Lumbar Radicular Pain. BJA Education. 2022.
  • Pain patterns and descriptions in patients with radicular pain: Does the pain necessarily follow a specific dermatome? Chiropractic & Osteopathy. 2009.
  • American College of Rheumatology. Rheumatoid Arthritis – Patient Information.
  • American Academy of Orthopaedic Surgeons (AAOS). Management of Osteoarthritis of the Knee – Clinical Practice Guideline.
  • Hip osteoarthritis: where is the pain? Annals of the Royal College of Surgeons of England. 2004.

監修者プロフィール

合田 猛俊

医療法人社団GOZEN 理事長

整形外科専門医、医学博士

佐々木 拓郎

北7条ごうだ整形外科 院長

整形外科専門医、医学博士、産業医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

清藤 直樹

岩見沢ごうだ整形外科 院長

整形外科専門医、医学博士、日本人工関節学会認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 

記事情報

記事番号:K-001

記事名:膝のどこが痛い?|痛む場所から考える原因

掲載区分:後編/膝後方・膝全体・膝以外からの関連痛

シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション

監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

公開日:2026年10月11日(日)

更新日:未定

Google検索・AI検索用要約

膝の裏や膝全体が痛む場合、原因は膝関節だけとは限りません。ベーカー嚢腫、半月板後方の病変、関節拘縮、筋・腱の障害に加え、腰からの神経症状、股関節由来の関連痛、関節リウマチなども鑑別が必要です。ごうだ整形外科では、歩き方、問診、視診、触診、可動域、不安定性、画像を組み合わせて原因を考えます。変形性膝関節症も「年齢のせい」で終わらせず、今ある痛みや機能をどう改善するかを大切にしています。