監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

「目標体重まで痩せたら、薬はやめられますか?」「ウゴービやゼップバウンドをやめたら、また太りますか?」「一生薬を続けなければならないのでしょうか?」「せっかく痩せたのに、リバウンドするのが怖い」——体重管理の薬物療法を行っている患者さんから、こうした質問を受けることがあります。

薬を使って体重を減らすことと同じくらい重要なのが「その薬をどうやって終えるか」です。ごうだ整形外科では、薬を長期間使い続けること自体を治療のゴールにはしていません。

薬を使う → 食事量を整える → 体重を減らす → 身体を動かしやすくする → 運動を始める → 筋肉量をできるだけ維持する → 運動を習慣にする → 最終的には薬だけに依存せず体重を管理する、という流れを目指します。

結論|薬をやめると体重が戻る可能性があります

ウゴービの有効成分セマグルチドや、ゼップバウンドの有効成分チルゼパチドでは、治療を中止した後に体重が再び増加したことが臨床試験で報告されています。

セマグルチドのSTEP 1試験の延長研究では、68週間の治療終了後1年間で、それまでに減少した体重の約3分の2が平均的に戻りました。チルゼパチドのSURMOUNT-4試験でも、薬物療法を中止した群ではその後に体重の再増加が確認されています。

「薬で痩せた → 薬をやめた → そのまま一生体重が維持される」とは限りません。だからこそ当院では、治療中から「薬をやめた後」の準備を始めることが重要だと考えています。

リバウンドは「意思が弱いから」起こるわけではありません

肥満症は、食欲、エネルギー摂取、代謝、生活環境、身体活動など複数の要因が関係する慢性的な疾患です。GLP-1関連薬を使用している間は、食欲や食事量などに薬の作用が加わっています。

薬を中止すれば、その作用がなくなるため、食欲や食事量が変化し、体重が再び増える可能性があります。「薬をやめればリバウンドするかもしれない」ということを最初から理解して治療することが大切です。

ごうだ整形外科では、治療開始時から「卒業」を考えます

当院では「まず薬を使って、痩せたらその後を考える」という治療にはしたくありません。治療を始める段階から、最終的にどう薬を終了するかを考えます。

これまでDシリーズで説明してきた「薬物療法は動き始めるための入口」という考え方は、ここにつながります。薬は入口です。出口は、患者さん自身が身体を動かし、自分で体重を管理できる状態です。

薬をやめられるかは「体重」だけでは判断しません

例えば「目標の60kgになったから、今日で薬をやめましょう」と、体重だけを見て判断することはありません。

ごうだ整形外科では、次の点を重視します。

目標体重にどこまで近づいたか

筋肉量が大きく減っていないか

体脂肪量が減っているか

運動が習慣になっているか

食事量を自分で管理できるか

膝や腰が動かせる状態になっているか

患者さん自身が現在の身体に満足しているか

その中でも特に重要だと考えているのが、筋肉量と運動習慣です。

筋肉を守れた人は、治療終了後の体重管理をしやすいと考えています

これは合田医師自身の診療経験から感じていることです。減量中に筋肉量の減少が少なく、運動が習慣化している患者さんでは、薬物療法を終了した後も体重を管理しやすい印象があります。

反対に、薬で食欲が落ちる → ほとんど食べなくなる → 短期間で体重が大きく減る → 脂肪と一緒に筋肉まで減る → 運動習慣もついていない、という状態では、その後の体重管理は難しくなる可能性があります。

もちろん「筋肉量を維持すれば絶対にリバウンドしない」という意味ではありません。しかし当院では、薬を終了する準備ができているかを見るうえで、筋肉量と運動習慣を重要な指標と考えています。

「何kg痩せたか」ではなく、痩せ方を見る

例えば10kg痩せた2人がいても、Aさんが「体脂肪−9kg・筋肉−1kg・運動習慣あり」、Bさんが「体脂肪−5kg・筋肉−5kg・運動習慣なし」なら、同じ10kg減でも身体の中身は違います。

ごうだ整形外科では、院内治療の場合、必要に応じてInBodyを使用して筋肉量、体脂肪量、体水分量などを確認します。「どれだけ痩せたか」だけではなく「どう痩せたか」が、治療終了を考えるうえでも重要です。

運動は「痩せるため」だけにするものではありません

当院では、運動を単にカロリーを消費して痩せるための手段とは考えていません。治療終了後を考えると、筋肉量を守る、身体を動かす習慣をつける、活動量を維持する、歩ける身体をつくるという重要な役割があります。

最初から激しい運動を求める必要はありません。低負荷でもまず続け、少しずつ「運動しなければならない」から「身体を動かすことが生活の一部」になることを目指します。

食欲が減ることは治療効果の一つです

ウゴービやゼップバウンドなどを使用している患者さんでは、「以前ほどお腹が空かない」「食べる量が自然に減った」「以前の量を食べられなくなった」と話される方が多くいます。

治療中に食事量が自然に減り、「これくらいの量でも十分なんだ」という新しい食事量に慣れることは、治療終了後の体重管理を考えるうえでも意味があります。

ただし「食欲がなくなったまま」がゴールではありません

治療終了後も過食に戻らず、適切な食事量を維持できることは、体重管理という意味では望ましい変化です。

しかし「おいしいものを食べたいと思わなくなった」という状態までを、治療の成功とは考えていません。食事には、家族と食卓を囲む、旅行先で料理を楽しむ、好きなものを食べる、季節の料理を味わう、という生活の楽しみがあります。

体重を維持するために食事の楽しみそのものまで失ってしまうのであれば、それが本当に理想的な治療なのかは考える必要があります。

目標は「食べたくない身体」ではなく「自分で食べる量を決められる生活」

当院が目指しているのは、食欲をなくし続けることではありません。

食事を楽しめる + 以前のような過食には戻らない + 自分で適切な量をコントロールできる状態を目指します。

「食欲を消す治療」から「食欲を自分で扱える生活」へ移行していくことです。薬を終了するということは、単に注射をやめることではなく、薬が担っていた部分を生活習慣と身体の変化へ少しずつ引き継いでいくことだと考えています。

「昔のように食べられない」は悪いこと?

以前の食事量そのものが多すぎた場合には、「以前ほど食べなくても満足できる」という変化は、治療終了後の体重維持に役立つ可能性があります。

一方、まったく食事に興味がない、食べることが苦痛、必要な栄養まで摂れないという状態は別です。これは「よく効いているからそのままでよい」とは考えません。治療効果と生活の質の両方を見る必要があります。

薬をやめるとき、自己判断で投与間隔を変えない

「毎週だった注射を2週間に1回にすればいいですか?」「月1回にしてからやめればリバウンドしませんか?」という質問もあります。実際の診療では、患者さんの状態を見ながら治療終了方法を個別に考えることがあります。

しかし、ウゴービやゼップバウンドには承認された用法・用量があります。「リバウンド予防には2週間に1回→月1回が正しいやめ方」と一般化することはできません。自己判断で用量や投与間隔を変更しないでください。

「薬をやめること」そのものを目標にしすぎない

薬をやめることが最優先になって、無理に治療を終了する必要もありません。肥満症は慢性的な疾患として考える必要があります。

治療を終了すると体重が大きく戻ってしまう患者さんでは、治療継続のメリットとデメリットを改めて考える必要があります。つまり「薬を続ける=失敗、薬をやめる=成功」ではありません。

どのような状態なら治療終了を検討する?

当院では体重計の数字だけで治療終了を決めません。目標体重への到達度に加え、体脂肪量、筋肉量、運動習慣、食事量、膝・腰の状態、患者さん自身の満足度などを確認します。特に筋肉量の減少が少なく、運動が習慣化していることを重視します。

薬をやめた直後の体重変化だけで一喜一憂しない

治療終了後に体重が少し増えたからといって、すぐに「リバウンドした」「治療に失敗した」と考える必要はありません。体重は食事、水分、便通、活動量などでも変動します。数週間から数か月の流れを見ることが重要です。

体重が戻り始めたら、まず生活の変化を確認する

治療終了後に体重が増え始めた場合、当院ではすぐ薬を再開するだけで考えません。食事量や間食、運動回数、歩行量、筋肉量、膝や腰の痛み、睡眠や生活リズムなど、治療中と比べて何が変わったのかを確認します。

薬を再開するかは個別に判断します

生活習慣を見直しても体重増加が続く、肥満に関連する健康障害が再び悪化する、膝や腰への負担が大きくなるなどの場合には、薬物療法を再検討することがあります。一時的な体重変動だけを理由に自己判断ですぐ再開することはおすすめしません。

リバウンドは珍しいことではありません

セマグルチドのSTEP 1延長試験では、治療中止1年後に、それまで減少した体重の約3分の2が平均的に戻りました。チルゼパチドのSURMOUNT-4でも、治療を中止した群ではその後52週間で体重の再増加が確認されています。

InBodyは治療終了後にも役立ちます

体重が増えても、それがすべて体脂肪とは限りません。逆に体重が変わっていなくても、筋肉量が減って体脂肪量が増えていることがあります。当院では必要に応じてInBodyで身体組成を確認します。

運動は治療終了後こそ重要です

当院では「薬をやめたから運動を始める」のではなく、「薬を使っている間に運動できる身体をつくっておく」という考え方を大切にしています。激しい運動でなくても、歩行、低負荷筋力トレーニング、自転車、ストレッチなど継続できる身体活動を生活に残します。

食事は「我慢」ではなく、新しい適量を身につける

治療終了後は、食欲をなくし続けることを目標にするのではなく、食事を楽しみながら以前の過食には戻らず、自分で適切な量を選べる状態を目指します。

膝や腰が再び痛くなったら、体重だけの問題にしない

体重が戻ると膝や腰への負担が増えることがあります。しかし痛みが再発したときには、変形性膝関節症や脊椎疾患などの原因も評価し、体重管理と整形外科治療を並行します。

薬を続けることも、終了することも「成功・失敗」ではありません

肥満症は慢性的な疾患です。「薬をやめられたから成功」「薬を続けているから失敗」とは評価しません。その患者さんが健康を維持し、身体を動かし、生活を楽しめているかを重視します。

ごうだ整形外科が考える「治療の卒業」

自分に合った食事量が分かる

食事を楽しみながら過食を避けられる

運動が習慣になっている

筋肉量をできるだけ維持できている

膝や腰が動かせる状態になっている

体重が多少変動しても自分で修正できる

必要なときには医療機関へ相談できる

薬が担っていた体重管理の一部を、身体と生活習慣へ引き継げた状態。それが、ごうだ整形外科が目指す「卒業」です。

よくある質問(FAQ)

Q1.GLP-1の薬をやめると必ずリバウンドしますか?

必ずではありませんが、セマグルチドやチルゼパチドの中止後に体重再増加が起こることは臨床試験で確認されています。

Q2.目標体重になったらすぐやめてもよいですか?

体重だけでは判断しません。筋肉量、体脂肪量、運動習慣、食事、健康状態などを確認して医師と相談します。

Q3.筋肉量を維持できればリバウンドしませんか?

筋肉量の維持は当院が重視する要素ですが、それだけでリバウンドを完全に防げるとは言えません。

Q4.薬をやめた後に1~2kg増えたら再開した方がよいですか?

短期間の体重変動だけで自己判断して再開せず、数週間の推移や身体組成、生活習慣を確認します。

Q5.投与間隔を空けてやめればリバウンドしませんか?

その方法が標準的なリバウンド予防法として確立されているわけではありません。自己判断で投与間隔を変更せず医師と相談してください。

Q6.薬は一生続ける必要がありますか?

すべての方が一生使用するわけではありません。一方、肥満症は慢性的な疾患であり、継続治療が必要な方もいます。

Q7.治療終了後もInBodyを測る意味はありますか?

あります。筋肉量や体脂肪量の変化を確認することで、体重再増加の中身を評価できます。

Q8.食欲が戻ったら失敗ですか?

いいえ。食欲があること自体は失敗ではありません。食事を楽しみながら適切な量を自分で調整できる状態を目指します。

Q9.リバウンドしたら、また治療できますか?

健康状態や適応を再評価し、必要に応じて食事・運動・薬物療法などを再検討します。

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自由診療による体重管理について【限定解除情報】

ごうだ整形外科では、患者さんの状態・治療目的・適応を確認したうえで、自由診療による体重管理を行う場合があります。自由診療は公的医療保険の対象外です。

治療内容

医師が問診・診察を行い、体重、BMI、既往歴、服薬状況、健康状態、治療目標などを確認します。食事・運動療法を基本として、医学的に適切と判断した場合に薬物療法を組み合わせます。

治療期間・回数の目安

治療期間には個人差があります。当院では半年~1年程度を一つの目安とし、原則として4週間ごとに体重、治療効果、副作用、運動状況などを確認します。

費用

ウゴービは0.25mg・4週間分14,800円から、ゼップバウンドは2.5mg・4週間分15,800円から、マンジャロは2.5mg・4週間分9,800円からです。診療料込み、送料1回1,700円、単月利用、継続縛りなしです。

主なリスク・副作用

悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの消化器症状がみられることがあります。また、急性膵炎、胆嚢・胆道系疾患、低血糖など、注意が必要な副作用があります。

国内承認について

ウゴービおよびゼップバウンドは日本国内で一定条件の肥満症に対して承認されています。マンジャロは日本国内では2型糖尿病について承認されています。

マンジャロの適応外使用について

マンジャロを肥満・減量目的で使用する場合は、国内で承認された効能・効果とは異なる適応外使用となります。

入手経路

当院は国内製薬会社、、卸会社から入手します。

医薬品副作用被害救済制度について

国内承認医薬品であっても、承認された効能・効果や用法・用量と異なる適応外使用を行った場合、医薬品副作用被害救済制度の救済給付の対象とならない可能性があります。

お問い合わせ

治療内容、費用、使用薬剤、副作用、治療終了等について不明な点がある場合は、ごうだ整形外科へお問い合わせください。

まとめ|リバウンド対策は「薬をやめる日」から始めるのではありません

GLP-1関連薬の中止後には体重が再び増える可能性があります。だからこそ、治療開始時から筋肉、運動、食事、膝・腰の状態を整えていくことが重要です。

当院では、薬をやめること自体を成功とは考えません。薬がなくても身体を動かし、食事を楽しみながら適量を選び、体重の変化に自分で対応できる状態を目指します。

参考資料

・Wilding JPH, et al. Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide: The STEP 1 trial extension. Diabetes Obes Metab. 2022.

・SURMOUNT-4 randomized withdrawal trial:チルゼパチド継続・中止後の体重変化に関する臨床試験。

・2026年公表のGLP-1受容体作動薬中止後の体重再増加に関する系統的レビュー。

監修者プロフィール

合田 猛俊

医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士 専門分野:疼痛治療・骨軟部腫瘍・手の外科

佐々木 拓郎

北7条ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター 専門分野:股関節・膝関節を中心とした下肢疾患

清藤 直樹

岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士 専門分野:人工関節・スポーツ整形・外傷