K-008 膝痛を悪化させない生活|歩き方・階段・運動・体重管理

【前編】毎日の動き方を変える|歩き方・階段・立ち上がり・正座

監修

合田 猛俊

佐々木 拓郎

清藤 直樹

膝が痛いと、「なるべく歩かない方がいいのでは?」「運動すると、さらに軟骨が減るのでは?」と心配される方は少なくありません。

しかし、膝痛があるからといって、すべての患者さんに「安静にしてください」と指導するわけではありません。

大切なのは、何が原因で膝が痛んでいるのかを確認し、その病態に合った動き方をすることです。

今回は、特に患者数の多い変形性膝関節症を中心に、膝を悪化させにくい日常生活について解説します。

1.膝痛の生活指導は「病名によって違う」

「膝が痛い」という症状だけで、生活指導を一つに決めることはできません。

変形性膝関節症なのか、半月板損傷なのか、靱帯損傷なのか、骨折なのか。原因によって、避けるべき動作も、勧める運動も違います。

ごうだ整形外科では、まず次のような点を確認し、その患者さんに合った生活指導を考えます。

  • 痛む場所
  • 痛む動作
  • 腫れや熱感
  • 膝の変形
  • 関節可動域
  • 筋力
  • レントゲンやMRI所見

この記事で紹介する内容も、主に変形性膝関節症に対する一般的な考え方です。

2.変形性膝関節症では「深く曲げ続ける動作」に注意

膝は曲げる角度が深くなるほど、関節への負担が大きくなる場面があります。そのため、変形性膝関節症で痛みがある場合には、次のような動作で症状が悪化することがあります。

  • 長時間のしゃがみ込み
  • 正座
  • 深く膝を曲げたままの作業
  • 長時間のあぐら

正座は絶対禁止なのか?

必ずしも「一度も正座してはいけない」という意味ではありません。

問題なのは、痛みがあるのに無理をして深い屈曲位を長時間続けることです。

正座やしゃがみ込みで痛みが出る方は、無理に続けないようにしましょう。

3.「痛いから外側に体重を逃がす」が正しいとは限らない

日本人の変形性膝関節症では、膝が外側へ開く内反膝、いわゆるO脚を伴う方が多くみられます。

内側が痛い患者さんでは、痛みを避けようとして無意識に体重を外側へ逃がして歩くことがあります。しかし、歩き方を自己流で大きく変えることが、必ずしも膝にとって良いとは限りません。

ごうだ整形外科では、内反の程度や歩行姿勢を確認したうえで、必要に応じて内側へ荷重を戻すことを意識した歩き方などを個別に指導することがあります。

ただし、歩行方法による膝関節負荷の変化には個人差があり、特定の歩き方をすべての患者さんへ一律に勧められるわけではありません。

「O脚だから親指側に強く体重をかければよい」と自己判断するのではなく、実際のアライメントを確認してもらうことが大切です。

4.階段では「膝の向き」にも注意する

階段は平地歩行よりも膝への負担が大きくなります。特に階段を下りるときには、大腿四頭筋が身体を支えながら働くため、変形性膝関節症や膝蓋大腿関節の痛みがある患者さんでは症状が出やすくなります。

内反が強い患者さんでは、階段でも膝がさらに外側へ開くような動作になっていないか確認します。必要に応じて、次のような工夫をします。

  • 手すりを使う
  • ゆっくり上り下りする
  • 膝とつま先の方向をそろえる
  • 強い痛みがある日は無理をしない

5.椅子から立つときは、低すぎる椅子を避ける

膝が痛い患者さんにとって意外に負担が大きいのが、椅子やソファからの立ち上がりです。

座面が低いほど膝を深く曲げる必要があり、立ち上がる際にも大きな筋力が必要になります。特に低いソファでは、膝だけでなく腰にも負担がかかります。

膝痛がある場合には、次のような工夫が役立ちます。

  • 少し高めの椅子を使用する
  • 深く沈み込むソファを避ける
  • 必要なら肘掛けを使う
  • 急に立ち上がらない

内反膝が強い患者さんでは、ごうだ整形外科では膝のアライメントを確認しながら、立ち上がる際の足幅や膝の向きを個別に指導することもあります。

6.「膝が悪いから歩かない」は勧めません

膝痛があると、できるだけ歩かないようにする方がいます。

しかし、活動量を極端に減らすと、筋力低下 → さらに歩きにくくなる → さらに活動量が減る、という悪循環に陥ることがあります。

変形性膝関節症では、筋力訓練や有酸素運動などの運動療法が治療の中心の一つです。

歩いても強く痛まないのであれば、歩くこと自体を禁止する必要はありません。

ただし、次のような場合には運動量を見直し、原因を確認する必要があります。

  • 歩くほど痛みが増える
  • 歩行後も強い痛みが長く残る
  • 膝が大きく腫れる
  • 急に歩けなくなった

7.長距離を歩く日は「若い頃と同じ動き」を求めない

年齢を重ねても、旅行や買い物、散歩を楽しむことは大切です。ただし、身体の動きは若い頃とまったく同じではありません。

長距離を歩く日は、次のようなことを意識してください。

  • 最初から飛ばさない
  • ゆっくり動き始める
  • 途中で休憩する
  • 疲れてから無理をしない
  • 痛みが強くなる前に休む

これは「年だから動かない」という意味ではありません。今の自分の身体に合った動き方を知ることが重要です。

8.膝は冷やす?温める?

患者さんから非常によく聞かれる質問です。答えは、膝の状態によって違います。

腫れて熱を持っているとき

急に腫れた、熱感がある、炎症が強い場合には、短時間の冷却によって症状が楽になることがあります。

ただし、強い発赤、激しい痛み、発熱、急激な腫れがある場合には、感染性関節炎や結晶誘発性関節炎なども考える必要があります。単に冷やして様子を見るのではなく、整形外科を受診してください。

慢性的な痛みやこわばり

一方、慢性的な変形性膝関節症では、「お風呂に入ると楽になる」「温泉に入った日は調子がいい」という患者さんは少なくありません。

慢性的な痛みやこわばりに対して、入浴などの温熱を気持ちよく感じるのであれば取り入れて構いません。