K-006 膝痛の検査|レントゲン・MRI・エコーで何がわかる? 【前編】まずレントゲンを撮る理由|骨・変形・アライメント・荷重位でわかること
K-006 膝痛の検査|レントゲン・MRI・エコーで何がわかる?
【前編】まずレントゲンを撮る理由|骨・変形・アライメント・荷重位でわかること
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
「MRIの方が詳しく分かるのなら、最初からMRIを撮った方がいいのでは?」
膝が痛い患者さんから、このように聞かれることがあります。
確かにMRIは、半月板、靱帯、軟骨、骨の内部など、レントゲンでは分かりにくい部分を詳しく調べられる優れた検査です。
しかし、MRIがレントゲンの上位検査というわけではありません。
レントゲンとMRIでは、見ているものが違います。
ごうだ整形外科では、膝痛の患者さんについて、必要性があると判断すればまず単純レントゲンを行い、診察所見と照らし合わせます。
そのうえで、レントゲンだけでは分からない病態が疑われる場合にMRIへ進みます。
1.ごうだ整形外科では診察前にレントゲンを撮ることがあります
ごうだ整形外科では、まず看護師が事前問診を行います。
その内容から「痛みの主な原因は膝関節にありそうだ」と判断した場合には、診察室へ入る前にレントゲン撮影を行うことがあります。
これは、患者さんが診察、レントゲン室、再び診察室と何度も移動する負担をできるだけ減らし、診療をスムーズに進めるためです。
ただし、医師がレントゲンだけを先に見て診断を決めるわけではありません。
K-005で解説したように、問診・歩き方・視診・触診・可動域・圧痛・徒手検査を行ったうえで、初めて患者さんと一緒にレントゲンを確認します。
2.レントゲンでは、まず膝全体を見ます
膝のレントゲンを見るとき、最初から関節裂隙の一部分だけを見るわけではありません。
まず膝全体を見ます。
特に確認するのが、アライメントです。
アライメントとは、大腿骨・膝関節・脛骨がどのような配列になっているか、簡単に言えば「脚全体の並び方」です。
例えば、内反変形、外反変形、左右差などがないかを確認します。
変形性膝関節症では、関節面の変化だけではなく、こうした膝全体の配列も重要です。
3.その後、骨を一つずつ確認します
膝全体を見た後は、各部位を確認していきます。
例えば、膝蓋骨、大腿骨、脛骨、腓骨近位部などです。
骨折がないか、骨の形に異常がないか、骨の一部に通常と違う陰影がないか、骨表面の変化がないかというように、骨を順番に確認します。
レントゲンは、骨そのものを見るという意味で非常に重要な検査です。
4.変形性膝関節症では「関節裂隙」を見る
変形性膝関節症を評価するときに重要なのが、関節裂隙です。
関節裂隙とは、レントゲン上で大腿骨と脛骨の間に見える隙間です。
本来この部分には関節軟骨や半月板があります。
しかし、軟骨そのものは通常のレントゲンには直接写りません。
そのため、関節裂隙が狭くなっているかを見て、軟骨の消耗などを間接的に評価します。
変形性膝関節症のレントゲン所見としては、関節裂隙狭小化のほか、骨棘や軟骨下骨硬化なども確認します。
5.骨棘や骨硬化も確認します
変形性膝関節症が進行すると、骨にもさまざまな変化が出てきます。
代表的なのが骨棘です。
骨棘とは、関節の周囲に骨が張り出してくる変化です。
さらに軟骨下骨が硬く見える骨硬化などもみられます。
こうした所見を、関節裂隙、アライメント、症状、圧痛部位、可動域と照らし合わせて、変形性膝関節症の状態を評価します。
6.変形性膝関節症では「立って撮るレントゲン」が重要
中高年で変形性膝関節症を疑う場合には、荷重位、つまり立った状態でのレントゲンが重要になることがあります。
寝た状態では体重が膝にかかっていません。
一方、立位では実際に膝へ体重がかかります。
そのため、荷重したときに関節裂隙がどの程度狭くなるかを見ることができます。
変形性膝関節症の評価では、荷重位レントゲンが関節裂隙狭小化の把握に有用です。
7.「寝て撮る写真」と「立って撮る写真」で違うことがあります
例えば、寝た状態では関節裂隙がある程度保たれていても、立って体重をかけると明らかに狭く見えることがあります。
患者さんは日常生活では、立つ、歩く、階段を使うといった荷重状態で痛みを感じています。
そのため、変形性膝関節症では実際に体重がかかった状態を見ることに意味があります。
また、撮影方向や膝の曲げ角度によって関節裂隙の見え方が変わるため、必要に応じて複数方向から評価します。
8.若い人の急性外傷では必ずしも荷重位は必要ありません
一方、若い患者さんがスポーツなどで膝を傷めた場合には、変形性関節症を評価する場合とは目的が違います。
急性外傷では、骨折がないか、膝蓋骨に異常がないか、骨の配列に異常がないか、脱臼などがないかという点を確認することが中心になります。
痛みが非常に強く、足をついて立つこと自体が難しい患者さんに、無理に荷重位撮影を行う必要はありません。
検査方法は年齢や病態によって変わります。
9.レントゲンで半月板は見えますか?
基本的に、半月板そのものを単純レントゲンで直接確認することはできません。
同様に、前十字靱帯、後十字靱帯、側副靱帯、関節軟骨なども、通常のレントゲンだけでは十分に評価できません。
だからといって、レントゲンに意味がないわけではありません。
まず骨・アライメント・変形を確認し、「レントゲンでは説明できない症状が残っている」場合にMRIなどへ進みます。
10.「レントゲンが正常=膝に問題がない」ではありません
これは患者さんにぜひ理解してほしいところです。
レントゲンで大きな異常がなくても、半月板損傷、靱帯損傷、軟骨障害、初期の軟骨下骨病変などが存在することがあります。
慢性膝痛で初期レントゲンが正常、または関節水腫のみの場合には、次の検査としてMRIが検討されることがあります。
前編まとめ|レントゲンにはMRIとは違う役割があります
膝痛のレントゲンでは、膝全体のアライメント、膝蓋骨・大腿骨・脛骨などの骨、関節裂隙、骨棘・骨硬化などの変形を確認していきます。
特に変形性膝関節症では、荷重位で関節裂隙がどう変化するかを見ることが重要です。
MRIの方が詳しく見える組織もあります。
しかし、「MRIの方が詳しいからレントゲンはいらない」ということではありません。
レントゲンとMRIは、見る対象と役割が違います。
後編へ続く
【K-006 後編】MRI・エコーはいつ使う?|半月板・靱帯・軟骨・骨の中を見る
後編では、MRIで半月板・靱帯・軟骨・骨内部をどう見るのか、MRIが必要な場面、エコーで分かること、MRIが難しい場合の代替、超音波ガイド下注射・穿刺、レントゲン・MRI・エコーの使い分けについて解説します。
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における膝画像検査の使い方と臨床経験を一次情報として構成しています。膝専門医・放射線診断専門医としての専門的見解を示すものではありません。レントゲン、荷重位撮影、変形性膝関節症の画像評価に関する記述は、標準的な医学知見と照合して患者さん向けに編集しています。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-006
記事名:膝痛の検査|レントゲン・MRI・エコーで何がわかる?
掲載区分:前編/レントゲン・骨・変形・アライメント・荷重位
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定


