L-016 腰痛を早く治すために日常生活で気をつけること

【中編】同じ姿勢を続けない|デスクワーク・運転・睡眠・コルセット

監修

合田 猛俊

佐々木 拓郎

清藤 直樹

前編では、中腰、重い物の持ち方、掃除や草むしり、洗面・台所仕事、腰痛を温めるか冷やすかについて解説しました。

腰痛を悪化させる原因は、重い物を持つような大きな動作だけではありません。

実際には、「同じ姿勢を長時間続けること」も腰への大きな負担になります。

デスクワーク、車の運転、飛行機での移動、立ち仕事などでは、本人は動いていないつもりでも、腰や股関節周囲の筋肉には長時間負荷がかかり続けています。

また、寝る姿勢、朝の起き上がり方、コルセットの使い方なども、腰痛の程度によっては症状に影響します。

中編では、日常生活の中で「同じ姿勢を続けない」ための工夫を中心に解説します。

9.「座っているのに腰が痛い」のはなぜ?

患者さんから、「何もしていないで座っているだけなのに、どうして腰が痛くなるのでしょうか」と聞かれることがあります。

しかし、座っていることは必ずしも腰を休ませている状態ではありません。

椅子に座ると、股関節は大きく曲がった状態になります。

長時間その姿勢を続ければ、骨盤や腰椎周囲にも同じ負荷がかかり続けます。

特に椎間板ヘルニアなど、前かがみや座位で症状が出やすい患者さんでは、立っているより座っている方が腰や足の痛みが強くなることもあります。

そのため、「座っている=安静」とは限りません。

自分がどの姿勢で痛みやしびれが出るのかを知ることが大切です。

10.「良い姿勢を続ける」より「同じ姿勢を続けない」

腰痛予防というと、「正しい姿勢で座りましょう」という説明をよく聞きます。

もちろん姿勢は重要です。

しかし、ごうだ整形外科では、それ以上に、同じ姿勢を長時間続けないことを大切にしています。

どれだけ姿勢が良くても、同じ姿勢を1時間、2時間と続ければ、筋肉や関節には負担がかかります。

一つの目安として、50分〜1時間程度同じ姿勢が続いたら、一度立ち上がる、少し歩く、軽く身体を伸ばす、座り直して姿勢を整えるなど、身体の状態を一度リセットしてみてください。

数分でも構いません。

長時間同じ姿勢を固定しないことが重要です。

11.デスクワークでは「画面から視線を外す」ことを休憩の合図に

現在は仕事で長時間パソコンを使う方が非常に多くなっています。

パソコン作業では、画面に集中することで、頭が前へ出る、背中が丸くなる、腰が曲がる、同じ姿勢を続ける、という状態になりやすくなります。

仕事に集中していると、「気づいたら2時間ほとんど動いていなかった」ということも珍しくありません。

そこで一つの方法として、定期的にモニターから視線を外すことを休憩のきっかけにします。

画面から目を離し、一度姿勢を戻す。可能なら立ち上がる。数歩でも歩く。

こうした小さな動作を繰り返すことで、同じ姿勢が長時間続くことを防ぎます。

腰だけでなく、首や肩の負担を減らす意味でも大切です。

12.長距離運転では1時間を目安に一度休憩する

車の運転も、腰に負担がかかりやすい場面です。

運転中は股関節を曲げた座位姿勢が続きます。

さらに運転では前方を見続ける必要があるため、デスクワーク以上に姿勢を変えにくいことがあります。

背中や腰にクッションを入れて工夫している方もいます。クッションで姿勢が楽になるのであれば利用して構いません。

しかし、もっと大切なのは、一度運転そのものを中断して身体を動かすことです。

長距離運転では、可能であれば1時間程度を一つの目安として安全な場所に停車し、車から降りる、腰を動かす、首や肩を動かす、脚を伸ばす、軽く歩くなど、全身を動かしてください。

13.スマートフォンのタイマーを「休憩の合図」にする

運転中は、「もう少し先まで行こう」と休憩を後回しにしがちです。

そのため当院では、長距離を運転する方には、スマートフォンなどで1時間程度のタイマーを設定するという方法も一つの工夫だと考えています。

タイマーが鳴ったら休憩する。数分で構いません。

痛みや脚の違和感を我慢して運転を続けると、運転操作へ影響する可能性もあります。

事故が起こってから、「少し休んでおけばよかった」となっては意味がありません。

腰痛対策だけではなく、安全運転のための休憩と考えてください。

14.長時間の飛行機では、可能なら一度立ち上がる

北海道から東京や大阪へ移動するだけでも、飛行機では1時間以上座っていることになります。

海外旅行では、さらに長時間の座位が続きます。

飛行機では、座席が狭い、自由に姿勢を変えにくい、周囲の乗客がいて立ちにくいなど、車以上に身体を動かしにくいことがあります。

可能であれば、通路側の座席を選ぶ、ときどき立ち上がる、トイレへ行く際に少し歩く、座ったまま足首を動かす、膝や脚を軽く動かすなどを行います。

特に長時間のフライトでは、腰痛対策だけではなく、長時間動かないことによる血流低下を防ぐ意味でも、脚を動かすことは大切です。

15.腰痛があるときは、どんな姿勢で寝ればいい?

寝方については、「仰向けがいいですか?」「横向きがいいですか?」とよく聞かれます。

実際には、全員に共通する一つの寝方があるわけではありません。

人は睡眠中に無意識に寝返りをします。

同じ場所に長時間圧力がかからないよう、自然に身体を動かしています。

そのため、「一晩中この姿勢で寝なければいけない」と考える必要はありません。

重要なのは、自分が痛みを感じにくい姿勢を見つけることです。

うつ伏せ寝は腰が反りやすい

うつ伏せで寝ると、腰が反った状態になりやすくなります。

腰を反らすことで症状が強くなる方では、うつ伏せ寝が負担になることがあります。

特に脊柱管狭窄症など、後屈で症状が出やすい患者さんでは注意が必要です。

横向きなら膝を少し曲げる

腰痛があるときには、横向きになって、膝を軽く曲げると楽になる方がいます。

腰や股関節周囲の緊張を減らし、腰が強く反るのを防ぎやすい姿勢です。

左右どちらを下にするかは、患者さん自身が楽な方で構いません。

仰向けなら膝の下にクッション

仰向けで寝る場合には、膝の下にクッションや枕を置く方法があります。

膝と股関節を少し曲げることで、腰椎の反りが強くなりすぎるのを抑え、腰周囲の筋肉の緊張が和らぐ方がいます。

寝たときに腰が浮いてつらいという方は、一度試してみてもよいでしょう。

16.「硬い布団ほど腰にいい」とは限りません

患者さんから、「腰痛には硬い布団がいいのでしょうか?」と聞かれることがあります。

これについては、一律に、硬い方がよい、柔らかい方がよい、とは言えません。

普段ベッドで寝ている方が旅行先で急に硬い布団へ変わり、腰が痛くなることもあります。

反対に、柔らかすぎる寝具が合わない方もいます。

特に注意したいのは、長期間使用して劣化し、腰の部分だけ大きく沈み込むマットレスです。

腰だけが沈み込むと、睡眠中に不自然な姿勢が長時間続く可能性があります。

寝具は「硬さ」だけで選ぶのではなく、寝たときに腰が不自然に沈んだり反ったりしないかを確認することが大切です。

17.朝起きるときは「最初の動き」を急がない

朝の腰痛について、もう一つ重要なのが起き上がり方です。

若い頃は、目覚まし時計が鳴った瞬間に身体を起こしても問題なかったかもしれません。

しかし年齢を重ねると、起床直後は筋肉や関節がまだ十分に動きにくいことがあります。

その状態から急に身体を起こすと、腰に強い負荷がかかる場合があります。

  • 目が覚めてもすぐに飛び起きない
  • 布団の中で手足や関節を少し動かす
  • 無理のない範囲で軽く身体を伸ばす
  • 一度横向きになる
  • 腕を使いながらゆっくり起き上がる

朝の腰痛予防では「最初の動きを急がない」ことが大切です。

18.コルセットは一日中つけた方がいい?

コルセットについてもよく質問されます。

コルセットを着けると腰が安定し、痛みが楽になる患者さんがいます。

特に、急性腰痛で強く痛む、腰を動かすと痛い、負荷の大きい仕事をする、重い物を扱う場合には、コルセットを利用することがあります。

ただし、「腰痛があるから毎日ずっと着けておけばよい」というものではありません。

長期間コルセットに頼り続けると、自分の筋肉を使う機会が減り、筋力低下につながる可能性があります。

特に若い方では、必要のない時まで常用することは勧めません。

19.一般的な腰痛では、寝るときはコルセットを外してよい

通常の腰痛でコルセットを使用している場合、基本的には就寝時は外してよいと考えています。

寝ている間は、仕事や家事のような大きな負荷が腰にかかるわけではありません。

一方で、成長期の疲労骨折、特定の脊椎疾患、骨折治療などでは、医師の指示によって長時間装着する場合があります。

したがって、「コルセットは必ず夜外す」という一律のルールではありません。

治療している病気によって使い方が変わります。

20.高齢者ではコルセットの役割が違うことがあります

若い方と高齢の方では、コルセットの考え方が異なる場合があります。

例えば、骨粗しょう症がある、圧迫骨折を繰り返している、腹筋や背筋がかなり低下している、コルセットを着けると明らかに動きやすい、という高齢の患者さんです。

このような方に、「コルセットを外して筋肉を鍛えましょう」と一律に指導することが現実的とは限りません。

すでに筋力が大きく低下している患者さんでは、筋肉の代わりに身体を外側から支え、安全に動くための補助具としてコルセットを使う意味があります。

目標はコルセットを外すことそのものではありません。

患者さんが安全に歩き、日常生活を維持できることが大切です。

中編まとめ|腰痛対策は「一つの姿勢を守り続けること」ではありません

腰痛があると、「正しい姿勢をしなければ」と考えすぎてしまうことがあります。

しかし、実際にはどれだけ良い姿勢でも、同じ状態を長時間続ければ身体には負担がかかります。

そのため、良い姿勢を固定することより、適度に姿勢を変えることが重要です。

デスクワークでは一度立つ。長距離運転では車を止める。飛行機では可能な範囲で身体を動かす。睡眠では自分が楽な姿勢を見つける。朝は急に起き上がらない。コルセットも、年齢や病態に合わせて必要なときに使う。

こうした小さな工夫の積み重ねが、腰への負担を減らします。

後編へ続く

【L-016 後編】運動・体重管理・再発予防|自分の腰痛を理解する

後編では、腰痛があるときに運動してよいのか、ウォーキングはいつから始めるか、「腰痛なら腹筋・背筋」は本当に正しいのか、椎間板ヘルニアで注意したい筋力トレーニング、スポーツ復帰の考え方、「休むことも治療」とはどういう意味か、体重増加と腰痛の関係、筋肉を落としすぎない減量、高齢者の体重管理、なぜ同じ腰痛を繰り返すのか、再発予防で一番大切な「自分の腰痛を理解すること」、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの腰痛対策について詳しく解説します。

監修者プロフィール

合田 猛俊

医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士

佐々木 拓郎

北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター

清藤 直樹

岩見沢ごうだ整形外科 院長

記事情報

記事番号:L-016

記事名:腰痛を早く治すために日常生活で気をつけること

掲載区分:中編/デスクワーク・運転・睡眠・コルセット

シリーズ:ごうだ整形外科の腰痛ナビゲーション

監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

公開日:未定

更新日:未定