L-012 この腰痛は受診すべき? 様子を見てもよい腰痛・早めに受診したい腰痛【前編】
L-012 この腰痛は受診すべき?
様子を見てもよい腰痛・早めに受診したい腰痛【前編】
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
「何日痛いか」より「日常生活ができるか」が大切です
腰痛が起こったとき、「すぐ整形外科へ行った方がいいのだろうか」「数日様子を見ても大丈夫だろうか」と迷う方は多いと思います。
腰痛の受診時期を考えるうえで、ごうだ整形外科がまず重視しているのは、腰痛が何日続いているかではなく、今の痛みによって日常生活にどのくらい支障が出ているかです。
多少腰が痛くても普段どおり生活できていて、症状が少しずつ軽くなっているのであれば、数日様子を見ることができる場合があります。
一方で、次のような症状がある場合には、早めの受診、場合によっては救急受診が必要です。
- 痛くて身体を動かせない
- 足に強いしびれがある
- 急に足に力が入らなくなった
- 尿が出ない、尿意を感じない
- 安静にしていても強く痛む
- 高熱を伴う
- 転倒後に起き上がれない
- 突然、経験したことのないような激しい腰痛が起こった
この記事では、腰痛を「救急受診を考える腰痛」「早めに整形外科を受診したい腰痛」「数日様子を見てもよい腰痛」の3段階に分けて解説します。
腰痛の受診目安を3段階で考える
状態 | 受診の目安 |
尿が出ない、急な麻痺、動けない激痛、高熱を伴う強い腰痛など | 救急受診を考える |
強いしびれ、安静時痛、転倒後の痛み、症状が悪化している | 早めに整形外科を受診 |
日常生活ができ、原因に心当たりがあり、症状が改善傾向 | 数日様子を見ることも可能 |
重要なのは、単純に「痛みが何日続いているか」だけで判断しないことです。たとえ腰痛が始まったばかりでも、普段の生活ができないほど症状が強ければ受診した方がよいと考えます。
1.今すぐ救急受診を考えたい腰痛
尿が出ない、尿意が分からない
腰痛と一緒に現れる症状のなかで、特に注意しなければならないのが膀胱直腸障害です。専門用語では分かりにくいですが、患者さん自身が気づける症状としては次のようなものがあります。
- 尿が出しにくい
- 尿が出ない
- 尿意を感じない
- お腹が張っているのに、おしっこをしたい感じがしない
- 便意を感じない
- 便が出ない
- お尻や陰部の感覚がおかしい
- お尻や陰部がしびれる、違和感がある
このような症状は、腰から出る神経が強く圧迫されている可能性があります。特に腰痛や下肢症状とともに突然尿が出なくなった場合は、翌日まで様子を見るのではなく、救急受診を考えるべき症状です。
急に足に力が入らなくなった
腰痛やしびれだけではなく、急に足に力が入らない、立てない、足を持ち上げられない、急につまずくようになったなど、明らかな筋力低下が突然現れた場合にも注意が必要です。
痛みは本人が強く自覚しますが、筋力低下は意外と本人が気づいていないことがあります。神経が強く圧迫されている可能性があるため、急激な筋力低下がある場合には早急な評価が必要です。
激痛でまったく身体を動かせない
腰痛の強さを数字だけで評価するより、実際に「身体を起こせるか」「歩けるか」「トイレへ行けるか」を見ることが重要です。
痛みのためにまったく身体を動かせない場合は、単純な腰痛と自己判断せず、早めの受診が必要です。
高熱と強い腰痛がある
発熱を伴う腰痛では、まれではありますが、脊椎炎や椎間板炎など、脊椎の感染症が原因になっていることがあります。
一方で、腰そのものが原因ではなく、腎盂腎炎や腎炎など腎臓周囲の病気、胆管炎、胆嚢炎などが腰痛として感じられることもあります。発熱そのものに伴う身体の痛みとして腰痛を感じることもあります。
つまり、「腰が痛い=すべて腰の病気」ではありません。高熱と強い腰痛があり、全身状態が悪い場合には救急受診も考える必要があります。
突然、経験したことのない激しい腰痛が起こった
腰痛のなかには、整形外科だけではなく、命に関わる病気が隠れていることがあります。その代表が腹部大動脈瘤や大動脈解離です。
特に、普段から血圧が高い方に、突然、動けなくなるほどの激しい腰痛が起こった場合には注意が必要です。大動脈解離などは命に関わる場合があります。
「ぎっくり腰だろう」と自宅で様子を見るのではなく、突然発症した非常に強い腰痛では救急受診を考えてください。
2.早めに整形外科を受診したい腰痛
安静にしていても痛い
一般的な腰痛の多くは、身体を動かしたときに痛みが強くなります。例えば関節由来の腰痛であれば、腰をひねる、身体を反らす、姿勢を変えるといった動作によって痛みが出ることがあります。筋肉由来の腰痛も、通常は筋肉を使ったときに痛みが強くなります。
そのため、「じっとしているのに強く痛い」「横になっていても痛い」「安静にしても痛みが治まらない」という腰痛は注意して診る必要があります。
このような腰痛では、骨折、骨の腫瘍性病変、神経への強い圧迫などが原因になっている場合があります。
もちろん、安静時に痛いからといって必ず重大な病気があるわけではありません。しかし、一般的な筋肉や関節由来の腰痛とは異なる原因が隠れている可能性があるため、早めに受診することをおすすめします。
3.転倒していなくても圧迫骨折は起こります
「転んでいないから骨折ではない」とは限りません。特に、高齢の方や骨粗しょう症のある方では、ごく小さな負担でも背骨の圧迫骨折を起こすことがあります。
特に高齢女性では、便座に腰を下ろした、軽く咳をした、少し身体をひねった、本人が覚えていない程度の動きをした、というようなきっかけでも骨がつぶれてしまうことがあります。いわゆる「いつの間にか骨折」です。
圧迫骨折では、腰の一部分を押すと強く痛む、ベッドから起き上がるときに強く痛む、寝返りで痛む、身体を起こす瞬間に特に強く痛む、といった症状がみられることがあります。
高齢者や骨粗しょう症のある方で、特にきっかけがないのに突然強い腰痛が起こった場合も、一度整形外科で確認した方がよいでしょう。
関連記事:L-008「腰椎圧迫骨折とは?」
4.足のしびれがあれば、すべて腰が原因とは限りません
しびれは、非常に判断が難しい症状です。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで神経が障害されれば、足にしびれが現れることがあります。
一方で、患者さんが「しびれ」と表現する症状のすべてが、腰の神経から起こっているわけではありません。血流の問題が原因になっていることもあれば、実際には「だるい」という感覚を「しびれる」と表現していることもあります。
そのため、ごうだ整形外科では、しびれがあるかないかだけではなく、「そのしびれによって日常生活にどの程度支障が出ているか」を重視します。
足の裏がしびれて、足をつけない
例えば、足の裏が強くしびれて足を床につけることもつらい状態であれば、明らかな知覚障害として神経症状を詳しく調べる必要があります。
患者さんからは、「足の裏に餅がくっついている感じがする」「小石を踏んでいるような感じがする」と表現されることがあります。このような足底の感覚異常では、S1神経領域の障害などを考えることがあります。
足先のしびれは外反母趾が原因の場合もある
一方、足先、特に足趾全体のしびれでは、腰だけを原因と考えないことも重要です。
例えば外反母趾によって足の横アーチが崩れると、足趾が中央へ集まるようになり、足裏だけでなく足の甲を含めた指先全体にしびれや違和感が出ることがあります。
これを腰の神経症状と判断して神経痛の薬だけを使用しても、原因が足にあれば症状は改善しません。その場合には、外反母趾や足部アーチに対する治療を考える必要があります。
しびれは「ある・ない」だけではなく、「どこが、どのようにしびれているか」を診ることが重要です。


