L-010 どんな時に腰が痛い?|動作から考えられる病気 前かがみ・反る・立ち上がる・歩く・寝返り|痛む動作から腰痛の原因を考える
L-010 どんな時に腰が痛い?|動作から考えられる病気
前かがみ・反る・立ち上がる・歩く・寝返り|痛む動作から腰痛の原因を考える
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
結論|「どんな時に痛いか」は腰痛の原因を考える重要な手掛かりです
「前かがみになると腰が痛い」
「後ろに反ると足がしびれる」
「椅子から立ち上がる瞬間が痛い」
「歩いていると痛くなり、休むとまた歩ける」
「寝返りやベッドから起き上がるときに痛い」
腰痛といっても、痛みが出る動作や姿勢は患者さんによって異なります。腰痛の診察では「どこが痛いか」と同じくらい、「どんな時に痛いか」が重要です。
前かがみで足まで痛みが走る場合には椎間板ヘルニア、後ろに反ったり長く立っていたりすると痛む場合には脊柱管狭窄症などを考える手掛かりになります。しかし、動作だけで病名を決めることはできません。
ごうだ整形外科では、どの動作で、どこに、どのような痛みが出るのかを確認し、診察所見や画像検査などと組み合わせて原因を絞っていきます。
1.腰痛では「どんな時に痛いか」が重要です
診察では、痛みの場所だけでなく「何をしたときに痛みますか?」ということを確認します。
- 靴下を履くと痛い
- 洗顔するときに痛い
- 中腰で作業すると痛い
- 車から降りるときに痛い
- 椅子から立ち上がると痛い
- ラジオ体操で後ろに反ると痛い
- 料理をしていると痛くなる
- 電車で立っているとつらい
- 授業中、長く座っていられない
- 寝返りをすると痛い
- ベッドから起き上がると痛い
さらに、腰だけが痛いのか、お尻や太ももまで痛むのか、足まで電気が走るように痛むのかも重要です。
2.動作から考えられる主な原因
痛みが出る場面 | 考えられる主な原因・部位 |
前かがみになると痛い | 椎間板ヘルニア、筋肉、椎間関節など |
後ろに反ると痛い | 脊柱管狭窄症など |
横に曲げると痛い | 椎間関節、椎間孔狭窄など |
歩くと痛くなり、休むと楽 | 脊柱管狭窄症による間欠性跛行など |
立ち上がる瞬間に痛い | 股関節、椎間板、椎間関節など |
寝返り・起き上がりで痛い | 圧迫骨折、椎間板ヘルニア、腰椎捻挫など |
長時間座っていると痛い | 筋肉の疲労、椎間板ヘルニアなど |
長時間立っていると痛い | 脊柱管狭窄症など |
腰をひねると痛い | 椎間関節、筋肉、椎間孔狭窄など |
咳・くしゃみ・いきみで足に電撃痛 | 椎間板ヘルニアなど |
この表は、自分の症状を理解するための目安です。この表だけで病名を自己診断することはできません。
3.前かがみになると腰が痛い
前かがみになると痛みが出る場合には、腰の前方から神経が刺激される状態を考えます。その代表的な病気の一つが腰椎椎間板ヘルニアです。特に、前かがみになったときに腰だけではなく、お尻や足へ痛みが走る場合には、神経が刺激されている可能性を考えます。
前かがみで足まで痛む場合
椎間板ヘルニアでは、前かがみになることで症状が強くなることがあります。診察では、前屈したときの症状だけでなく、SLR(下肢伸展挙上テスト)なども確認します。SLRは、仰向けで膝を伸ばしたまま脚を持ち上げ、神経が刺激されたときに痛みが誘発されるかを見る検査です。
前屈による足への痛みとSLRなどの所見を組み合わせ、椎間板ヘルニアによる神経症状がないかを考えます。
関連記事:L-003「腰椎椎間板ヘルニアとは?」
中腰で作業すると腰が痛い場合
「前かがみになると痛い」といっても、すべてが椎間板ヘルニアではありません。
- 草取り
- 掃除
- 中腰での作業
- 長時間の前かがみ姿勢
などで腰だけが痛くなる場合には、筋肉や椎間関節などが関係していることもあります。同じ前屈でも、一瞬前かがみになっただけで足まで痛みが走るのか、中腰を長時間続けた結果、腰の筋肉が痛くなってきたのかでは意味が異なります。
「立ち上がると痛い」の中にも前屈があります
椅子から立ち上がるとき、人は一度身体を前へ移動させ、その反動を使って立ち上がります。車から降りるときにも、身体を前へ倒してから起き上がる動作が入ります。そのため「立ち上がると痛い」「車から降りるときに痛い」という訴えでも、実際には前屈によって症状が誘発されていることがあります。
前かがみで痛いときの立ち上がり方
前かがみになると強く痛む時期には、机や手すりなど安定した場所に手をつき、足の力を使って立ち上がることで痛みを減らせる場合があります。
4.後ろに反ると腰が痛い
腰を後ろへ反ったときに痛みが出る場合には、腰部脊柱管狭窄症を考える重要な手掛かりになります。脊柱管狭窄症では、腰を反ることで神経の通り道がさらに狭くなり、神経が刺激されて症状が出ることがあります。
たとえば「ラジオ体操で後ろへ反る運動をすると痛い」という訴えです。
関連記事:L-004「腰部脊柱管狭窄症とは?」
「反ったとき」だけではなく「立っているだけで痛い」こともあります
脊柱管狭窄症では、大きく後ろへ反ったときだけ症状が出るとは限りません。「長く立っていると腰や足がつらくなる」という場合、立って腰を伸ばした姿勢を維持すること自体が症状を誘発していることがあります。
5.横に曲げる・ひねると腰が痛い
腰を横へ曲げる動作を側屈といいます。側屈したときに痛みが出る場合には、椎間関節、椎間孔狭窄などを考えます。椎間孔は、腰椎から神経が外へ出ていく通り道です。
腰をひねったときに痛い
「後ろの物を取ろうとして腰をひねった」「ゴルフのスイングで腰が痛い」「寝返りで身体をひねると痛い」という場合には、椎間関節や筋肉などの問題を考えます。ひねった瞬間に腰だけが痛む場合には局所の問題を考え、神経に沿ってお尻や足まで痛みが走る場合には椎間孔狭窄などを考えます。
6.歩くと痛い・休むと楽になる
「歩き始めは大丈夫だけれど、しばらく歩くと腰や足が痛くなる」「少し休むと、また歩ける」「前かがみになると楽になる」という症状は、脊柱管狭窄症による間欠性跛行でみられる典型的な症状です。
前かがみになると楽になるのも特徴です
脊柱管狭窄症では、腰を伸ばした状態では神経の通り道が狭くなりやすく、前かがみになることで脊柱管が広がり、症状が軽くなることがあります。
関連記事:L-004「腰部脊柱管狭窄症とは?」
血管が原因で歩けなくなることもあります
歩くと足が痛くなり、休むと再び歩ける症状は、血管性の間欠性跛行でも現れることがあります。神経由来では腰側からお尻、太もも、下腿へと症状が広がることがあり、血管性では末梢側から上方へ症状が広がることがあります。
ただし、患者さん自身がこの違いだけで判断することは難しいため、歩行時の足の痛みが続く場合には原因を確認することが大切です。
7.椅子・ソファーから立ち上がる瞬間に痛い
「座っている間は大丈夫なのに、立ち上がる瞬間だけ痛い」という患者さんもいます。この場合には、立ち上がるという一つの動作をさらに分けて考えます。
体重をかけた瞬間に痛い
立ち上がって足に体重をかけた瞬間に強く痛む場合には、股関節などの関節由来の痛みを考えます。特に股関節が原因の場合には、立ち上がった瞬間に足の付け根周辺などに痛みが出ることがあります。
立ち上がる動作そのもので痛い
身体を前へ倒して立ち上がる一連の動作で腰に痛みが出る場合には、椎間板ヘルニア、椎間関節などを考えます。「立ち上がると痛い」だけでは原因は分かりません。荷重した瞬間なのか、身体を前へ倒した瞬間なのか、腰だけなのか、足まで痛むのかを確認します。
8.寝返り・ベッドからの起き上がりで痛い
寝ている間はそれほど痛くないのに、「寝返りをすると痛い」「朝、ベッドから身体を起こす瞬間に激痛が走る」という患者さんもいます。
圧迫骨折では「起き上がる瞬間」が重要です
腰椎圧迫骨折では、まったく寝返りをせず、身体を棒のようにして寝ている間は、それほど痛みを感じないことがあります。しかし、ベッドから起き上がるときには身体が前屈します。その前屈する瞬間に強い痛みが出ることが、圧迫骨折を考える手掛かりになります。
一度起き上がってしまうと、何とか動けるという患者さんもいます。そのため、「寝ているときは痛くないから骨折ではない」とは限りません。
関連記事:L-008「腰椎圧迫骨折とは?」
「寝返りで痛い」だけでは原因を決められません
寝返りによる腰痛にはさまざまな原因があります。椎間板ヘルニア、腰椎捻挫、筋肉や関節などの問題でも寝返りによって痛みが出ることがあります。
そのため、「寝返りで痛い=圧迫骨折」というように、一つの動作だけで病名を決めることはできません。
前半のポイント
ここまで見てきたように、腰痛では「何をしたときに痛むのか」が診断の大切な手掛かりになります。
前かがみで足まで痛むなら椎間板ヘルニア、後ろに反ったり長く立っていたりして痛むなら脊柱管狭窄症、荷重した瞬間に痛むなら股関節、起き上がる瞬間に強く痛むなら圧迫骨折など、それぞれ原因を考えるための特徴があります。
ただし、どの症状も一つの動作だけで病名を確定することはできません。どの動作で、どこに、どのような痛みが出るのか。そして、腰だけなのか、お尻や足まで症状が広がるのかを合わせて考えることが重要です。
後半では、朝起きたときの痛み、長時間の座位・立位、咳・くしゃみ・いきみ、安静時痛・夜間痛、診察の流れ、受診の目安について解説します。


