L-015 腰痛の治療法|薬・リハビリ・神経ブロック・手術をどう使い分ける? 【中編】腰痛のリハビリと神経ブロック|痛みを下げて身体を動かす
L-015 腰痛の治療法|薬・リハビリ・神経ブロック・手術をどう使い分ける?
【中編】腰痛のリハビリと神経ブロック|痛みを下げて身体を動かす
監修/合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
前編では、腰痛治療の最初の段階として、薬物療法と急性期の治療について解説しました。
腰痛治療では、まず強い痛みを軽減することが重要です。
しかし、薬だけですべての腰痛を治療できるわけではありません。
痛みが落ち着いた後には、筋力や身体の動きを改善するためのリハビリが必要になることがあります。
また、痛みが非常に強い、薬だけでは十分に痛みを抑えられない、できるだけ早く仕事や日常生活へ戻りたい、夜も痛くて眠れない、という場合には、神経ブロックを検討することがあります。
ごうだ整形外科では、痛みの強さ、原因、患者さんの生活状況を考えながら、薬・リハビリ・神経ブロックを組み合わせて治療します。
8.腰痛のリハビリには大きく2つの役割があります
腰痛に対するリハビリは、大きく分けると、
① 痛みを軽減するための物理療法
② 身体の機能を改善するための運動器リハビリ・運動療法
があります。
同じ「リハビリ」という言葉でも、急性期と慢性期では目的が異なります。
痛みが非常に強い急性期から無理に筋力トレーニングを行えば、かえって症状が強くなることがあります。
そのため、患者さんの状態に合わせてリハビリの内容を変えることが重要です。
9.急性期は、まず痛みを和らげる物理療法
急性期には、強い運動療法よりも、まず痛みを軽減することを考えます。
物理療法には、温熱療法、電気刺激、マッサージなどの徒手的な治療、症状に応じた各種治療機器などがあります。
こうした治療によって筋肉の緊張を和らげたり、痛みを軽減したりしながら、身体を動かせる状態へ近づけていきます。
当院では、深部への作用を目的としたレーザー機器なども、症状に応じて物理療法の一つとして使用しています。
10.急性期に無理な運動を行わない
腰痛では、「運動した方がいいと言われたから」と、痛みが強い時期から無理に筋力トレーニングを始める患者さんもいます。
しかし、急性期に強い運動を行うことで、かえって痛みが増える場合があります。
急性期では、まず痛みをある程度コントロールすることが優先されます。
そして身体を動かせる状態になってから、筋力、柔軟性、姿勢、身体の使い方を改善する運動療法へ進みます。
リハビリは、早く強い運動をすればよいわけではありません。その時期に適した内容を選ぶことが大切です。
11.痛みが落ち着いたら「自分で身体を動かす」リハビリへ
慢性的な腰痛や、急性期を過ぎた患者さんでは、理学療法士による運動器リハビリを行います。
特に、筋力が低下している、身体が硬くなっている、関節の動きが悪くなっている、姿勢に問題がある、腰痛を繰り返している場合には、患者さん自身が身体を動かすことが重要になります。
運動療法では、体幹筋力の改善、股関節や下肢の柔軟性改善、関節可動域の改善、姿勢の修正、腰に負担をかけにくい身体の使い方などを患者さんの状態に応じて指導します。
12.「受け身の治療」だけでは症状が戻ることがあります
マッサージや温熱療法などは、治療直後に身体が楽になることがあります。これは大切な治療です。
しかし、外から刺激を与える治療だけでは、時間が経つと再び筋肉が硬くなったり、痛みが戻ったりすることがあります。
そのため慢性腰痛では、「治療してもらう」だけではなく、「自分で身体を動かす」ことが重要になります。
物理療法で痛みを軽減し、そのうえで運動療法によって筋力や身体の使い方を改善する。この2つを組み合わせることで、痛みを繰り返しにくい身体を目指します。
13.北7条ごうだ整形外科ではTechnogymを活用しています
北7条ごうだ整形外科では、運動療法のためにTechnogym(テクノジム)を導入しています。
Technogymを使用する目的は、単に筋肉を鍛えることではありません。患者さん自身が、自分の身体を自分で動かすことが重要です。
長期間腰痛が続いていた患者さんでも、継続的な運動療法によって症状が軽減することがあります。
もちろん、すべての腰痛が運動だけで改善するわけではありません。しかし、慢性的な腰痛では、身体活動を取り戻すことが治療の重要な一部になります。
14.80代・90代でも「運動能力を落とさない」ことが大切です
運動療法は若い患者さんだけのものではありません。
当院では、80代・90代の患者さんでも、身体の状態に応じて運動療法を行っています。
高齢になると、「この年齢で運動して大丈夫でしょうか」と心配される方もいます。また、一般のスポーツジムへ行くことに抵抗を感じる方も少なくありません。
しかし、年齢を重ねるほど、筋力を維持する、歩く能力を維持する、自分で立ち上がる、自分で生活するための身体能力を保つことが重要になります。
病院で行うリハビリには、「腰痛を治す」だけではなく、「自分の力で生活する能力を落とさない」という役割もあります。
15.リハビリの効果は約1か月を目安に評価します
リハビリは、1回行っただけで効果を判断するものではありません。
当院では、まず約1か月を一つの目安として経過を評価します。
そのときに、痛みが軽減しているか、身体が動かしやすくなったか、歩行や日常生活が改善したか、筋力が改善しているか、可動域が改善しているかなどを確認します。
効果があれば、現在の運動を継続する、運動強度を少し上げる、次の段階の運動へ進むことを考えます。
一方、十分な効果がなければ、リハビリ内容を変更する、薬を見直す、痛みの原因をもう一度評価する、神経ブロックなど他の治療を検討する、といった対応を行います。
リハビリも、同じ内容を漫然と続けるのではなく、効果を確認しながら調整することが重要です。
16.どんなときに神経ブロックを行う?
ごうだ整形外科で神経ブロックを検討する中心となるのは、強い痛みがある患者さんです。
例えば、日常生活ができないほど痛い、仕事への影響が大きい、できるだけ早く痛みを軽減したい、夜も痛くて眠れない、薬を使用しても十分に痛みが取れない、椎間板ヘルニアなどによる強い神経痛がある場合などです。
最近では、ホームページなどで神経ブロックについて調べ、「神経ブロックを受けたい」と希望して当院を受診される患者さんもいます。
ただし、希望された患者さん全員に神経ブロックを行うわけではありません。
診察・神経所見・画像などを確認し、本当に神経ブロックが適した状態なのかを判断します。
17.できるだけ早く痛みを取りたい患者さんにも神経ブロックを検討します
同じ程度の腰痛でも、患者さんによって必要な治療は異なります。
例えば薬を使えば時間の経過とともに改善する可能性がある患者さんでも、大切な仕事がある、出張を控えている、家庭の事情で休むことができない、どうしても早く動ける状態になりたい、という場合があります。
そのような患者さんでは、症状や病態が神経ブロックに適していれば、より早く痛みを軽減するために神経ブロックを検討することがあります。
治療方法は画像だけで決めるのではなく、患者さんの生活背景も含めて考えることが大切です。
18.夜眠れない痛みは、神経ブロックを考える大きな理由の一つです
夜間痛によって眠れない状態は、患者さんにとって非常に大きな負担です。
睡眠不足が続けば、日中の眠気、疲労、集中力低下、仕事への影響などが起こります。
当院では、痛みで眠れない患者さんに対して、単純に睡眠薬を使用するのではなく、できるだけ痛みそのものを軽減して眠れる状態へ戻すことを重視しています。
薬だけでは十分に痛みを抑えられない場合には、神経ブロックを積極的に検討することがあります。
19.神経ブロックは「痛みを一段下げる」治療
神経ブロックを行ったからといって、その瞬間から病気そのものが完全になくなるわけではありません。
神経ブロックの重要な役割の一つは、非常に強い痛みを一段低いレベルまで下げることです。
例えば内服薬だけでは痛みを十分にコントロールできない患者さんでも、神経ブロックを追加することで痛みが大きく軽減する場合があります。
すると、その後は普段使用している鎮痛薬だけでも痛みを管理できるようになることがあります。
つまり、神経ブロックだけですべてを治すのではなく、その後の薬物療法でもコントロールできる状態へ持っていく、という役割があります。
20.ブロックの効果が切れたら、必ず元の痛みに戻るわけではありません
神経ブロックに使用する局所麻酔薬の作用は永遠に続くものではありません。
しかし、麻酔薬の作用がなくなったあとも、以前より症状が軽くなっている患者さんがいます。
その理由としては、神経周囲の炎症が落ち着く、神経の腫れが軽減する、椎間板ヘルニアなど元の病態が時間とともに変化する、強い痛みが軽減したことで身体を動かせるようになる、など複数の要因が考えられます。
神経ブロックによって急性期の強い痛みを抑えている間に、元の病態そのものが改善していくこともあります。
21.神経根ブロックは「原因となる神経」をピンポイントで治療します
神経根ブロックは、痛みの原因と考えられる神経根に対して直接治療を行う方法です。
例えば、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、明らかな神経根症状などがあり、L4・L5・S1など責任神経をある程度特定できる場合には神経根ブロックを検討します。
神経根を直接狙うため、神経ブロックの中でも治療効果を期待できる方法の一つですが、処置そのものには痛みを伴います。
そのため、軽い症状に対して安易に行う治療ではありません。
22.原因となる神経を一つに絞れない場合には、より広い範囲を治療します
一方、「非常に腰が痛いけれど、どの神経が原因なのか一つに決められない」という場合があります。
例えば、いわゆるぎっくり腰のように強い腰痛で身体を動かすことが難しくても、特定の神経根症状とは言い切れないケースです。
そのような場合には、症状に応じて腰部神経叢ブロックや硬膜外ブロックなど、神経根ブロックより広い範囲を対象とした治療を検討します。
神経ブロック | 主な考え方 |
神経根ブロック | 痛みの原因となる神経をピンポイントで治療 |
腰部神経叢ブロック | 責任神経を一つに特定しにくい痛みに広く対応 |
硬膜外ブロック | 病態に応じて複数の神経症状へ対応 |
23.MRIで原因が見つからなくても神経根ブロックを行うことがあります
例えば、痛みやしびれの場所、筋力、感覚、神経学的診察からは明らかにL5神経領域の症状と考えられるのに、MRIでははっきりした圧迫が確認できない患者さんがいます。
そのような場合、「MRIに原因が写っていないから、痛いはずがない」とは考えません。
正確には、「患者さんには症状がある。しかし現在の画像では、その原因を特定できていない」と考えます。
神経周囲に一時的な炎症や圧迫が起き、その後画像上では目立たなくなっている可能性もあります。
診察所見から特定の神経が症状に関係している可能性が高い場合には、その神経に対する神経根ブロックを検討することがあります。
24.神経ブロックには「診断」と「治療」の両方の意味があります
画像で原因を特定できない患者さんに神経根ブロックを行い、症状が大きく軽減した場合には、その神経が現在の痛みに関係している可能性を考える重要な手がかりになります。
このように神経ブロックには、痛みを軽減する治療としての役割だけでなく、痛みの原因となっている神経を確認する診断的な意味を持つ場合があります。
ただし、神経ブロックは痛みを伴う処置です。
そのため、診断だけを目的として軽い症状の患者さんに行うわけではありません。
あくまで強い症状があり、治療としての必要性もある場合に行います。
25.神経ブロックが効かなければ、まず診断を見直します
例えばL5神経が原因と考えて神経根ブロックを行ったのに、ほとんど症状が変わらなかったとします。
その場合、「もっと強い治療をしよう」と考える前に、「本当にL5神経が原因だったのか」をもう一度考えます。
L4神経ではないか、S1神経ではないか、神経以外の痛みではないか、画像所見と症状をもう一度照らし合わせる必要はないか、などを再評価します。
それでもL5が責任神経と考えられる場合には、改めて神経ブロックを行う選択肢があります。
一方、別の神経が原因と判断すれば、その神経を治療します。
治療が効かないときには、治療を強くする前に診断を見直す。これは腰痛治療で非常に重要な考え方です。
26.神経ブロックでは、痛みの伝達と炎症の両方に働きかけます
神経ブロックでは、局所麻酔薬などを使用し、神経から伝わる痛みの信号を一時的に遮断します。
また、病態に応じて炎症を抑える薬剤を使用することがあります。
神経周囲に炎症や腫れがある場合には、その炎症を軽減することで症状の改善を期待します。
当院では、患者さんの病態に応じて薬剤の濃度や使用方法を調整しています。
ただし、神経周囲への薬液注入による物理的なリリースなどについては、まだ十分に学術的に確立されていない部分もあります。
そのため、当院で行っている治療上の工夫と、医学的に確立された作用を区別しながら治療しています。
中編まとめ|痛みを下げ、その先に「動ける身体」をつくる
腰痛治療では、痛みを軽減することと、身体の機能を改善することの両方が重要です。
急性期には物理療法などを使い、まず強い痛みを抑える。痛みが落ち着いたら、患者さん自身が身体を動かす運動療法へ進む。そして薬だけでは抑えきれない強い神経痛では、神経ブロックを検討します。
神経ブロックは、「最後の手段」でも「希望すれば必ず行う治療」でもありません。
患者さんの症状・診察所見・画像・生活状況から必要性を判断して行います。
また、ブロックが効かなければ、診断そのものをもう一度見直すことも大切です。
治療は一方向に進むものではありません。診断と治療を繰り返し確認しながら、患者さんにとって最も適した方法を選んでいきます。
後編へ続く
【L-015 後編】手術・慢性腰痛・再発予防|腰痛治療のゴールとは?
後編では、神経が圧迫されていてもすぐ手術とは限らない理由、膀胱直腸障害で早急な手術が必要な理由、麻痺があれば必ず手術なのか、保存治療で改善しない場合、神経ブロックを手術効果の判断材料にする場合、高齢者や合併症で手術できない場合の治療、慢性腰痛では何を治療するのか、腰痛治療のゴールは「痛みゼロ」なのか、コルセットの使い方、腰痛を再発させにくい身体の使い方、治療効果をどう評価するのかについて詳しく解説します。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医・医学博士
佐々木 拓郎
札幌北7条ごうだ整形外科 総合院長/整形外科専門医・医学博士
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医・医学博士


