神経ブロック治療について

  長年整形外科治療に携わっていますが、投薬やリハビリなどで症状を改善できず手術をしても症状が残存したり、改善しない患者さまの治療に難渋してきました。特に脊椎の治療後にそのような症状で治療に難渋することが多く、医療の限界を感じていたのですが、わたくしの大学の同期で新小岩にてペインクリニックを開院している水村郁先生の治療に触れる機会がありました。彼は麻酔科で修行をした後、整形外科の研鑽もつみ現在の地でペインクリニック(神経ブロック専門病院)を開院されています。詳細は彼の医院のホームページをご覧ください。そこではわたくしの長年のジレンマを解決する一つの方法が実践されていました。患者さまの中には何らの事情で手術を受けられないかたや、手術後症状の残存に悩まれている方がいます。神経ブロック療法は原因を取り除く治療ではありませんが、症状を改善する一つの方法と言えます。急性腰痛症で身動きできない状態の改善や寝ることできないほどの神経痛を和らげることのできる治療のひとつです。

 岩見沢ごうだ整形外科では一日に10名程度の患者さまが神経ブロック治療を受けます。神経の痛みは複雑で症状の原因を取り除いても、一度ダメージを受けた神経は容易には回復しないことがあります。例えば、足を切断した方がないはずの足が痛いという話があります。幻肢痛と表現される症状です。従来は向精神薬の投与などが行われていました。痛みの原因である足がない状態は、手術で神経の圧迫を除去した状態と同じと言えます。原因の治療が終わったのでこれ以上できることはないのでしょうか?治療の目的は物理的な原因を取り除くことではなく、症状を取り除くことにあると思います。神経ブロック治療はこれらの痛みを取り除く可能性のある治療です。

当院では腰部神経叢(大腰筋筋溝)ブロック、仙骨神経叢ブロック、神経根ブロック、仙骨部硬膜外ブロック、星状神経節ブロック、斜角筋ブロック、エコー用いた各種末梢神経ブロックなどを実践しています。さらに内服薬を併用したり、パルスレーザー治療器を使用することもあります。もちろん、これですべての症状が解決すればいいのですが、残念ながら症状の取り切れない患者様も存在します。最近は神経ブロックにPRP療法を併用したり、ブロック方法も単に麻酔薬の効果に期待するのではなく、神経周膜のリリース効果を考えたブロックを行っています。長年の症状に悩まれている方は試してみる価値のある治療と考えています。 合田猛俊